全国文化財総覧

全国文化財総覧

全国文化財総覧（ぜんこくぶんかざいそうらん）、旧称・全国遺跡報告総覧（ぜんこくいせきほうこくそうらん）は、独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所（奈文研）が管理する、国内の遺跡発掘調査報告書や文化財関連資料をデジタル化し、インターネット上で検索・閲覧できるプラットフォームです。

概要

文化庁の調査によると、日本全土には約460,000箇所の遺跡が存在し、毎年約9,000件の発掘調査が行われています。遺跡の多くは調査が終了した後に土木工事などによって消えてしまうため、それに関する報告書は現地での保存が難しく、発掘結果の記録として非常に重要です。これらの報告書は、考古学や歴史学の研究資源としてだけでなく、教育の資料としても活用されることが期待されています。しかし、1つの遺跡に関する報告書は通常300部程度しか発行されないため、周辺地域の図書館や国立国会図書館などに限定されて所蔵されているケースが一般的です。そのため多くの場合、一般に流通せず、「灰色文献」と呼ばれることもあります。

全国遺跡報告総覧は、このようにアクセスが難しい報告書を整理し、著作権の問題をクリアしたものをインターネットで公開することで、学術研究者のみならず一般ユーザーにも利用できるようにすることを目指しています。全文のPDFは存在しないものの、要約情報を提供することで利用促進を図っています。開設以来、利用者数は増加の一途をたどり、2013年度には約300,000件のダウンロードが記録されました。文化庁は、埋蔵文化財の保存と活用が効果的であるとの立場から、地方自治体や研究機関の参加と報告書のデータ提供を求めています。2025年4月1日現在では、書誌情報が133,648件、PDFが42954件、抄録が225,981件登録されています。

使用方法

ユーザーは遺跡名、遺構名、遺物名、時代名、調査機関名（例：〇〇県埋蔵文化財センター）などのキーワードを入力して検索することで、関連のある発掘調査報告書を簡単に見つけることができます。ダウンロード機能がある報告書については、全文をダウンロードして自身のデバイスに保存することも可能です。

沿革

全国文化財総覧の前身である「全国遺跡資料リポジトリ・プロジェクト」は、2007年度に島根大学附属図書館を中心に立ち上がりました。このプロジェクトでは、報告書の電子公開が開始されました。2008年度から2012年度には、国立情報学研究所の普及促進事業の一環として、全国21の国立大学が協力し、26の都道府県の発掘調査報告書を電子化しました。2014年度からは事業の継続に向けて「全国遺跡報告総覧プロジェクト」が始まり、2015年度には奈良文化財研究所が現在のシステムを統合する形で全国遺跡報告総覧として発展しました。そして、2025年3月31日には報告書以外の資料も多く含まれることから、サイト名を全国文化財総覧に改称しました。

ウィキペディアとの連携

2021年4月26日には、奈文研が全国文化財総覧に登録された資料（報告書や論文など）を、ウィキペディアの出典情報として効率的に引用できるよう、発掘調査報告書の書誌情報を自動表示するアイコンを導入しました。この施策により、考古学や遺跡に関する情報を編集するウィキペディアユーザーにとって、参照元としての利用が非常に円滑になりました。

全国文化財総覧は、日本の文化財情報を広く伝える重要な役割を果たしています。その取り組みは、国民の文化財に対する理解を深める手助けとなることでしょう。

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