全国水平社

全国水平社（ぜんこくすいへいしゃ）

全国水平社は、1922年3月に設立された日本で2番目の全国規模の融和団体であり、部落解放運動の先駆けとなった重要な組織です。略称は全水（ぜんすい）で、戦後に形成された部落解放全国委員会や部落解放同盟の前身ともいえる存在です。この団体は、差別の撤廃を目指し、被差別部落民の権利向上を訴える活動を行ってきました。

背景と歴史

明治維新後、解放令が発布され、穢多・非人などの被差別部落民は形式的には身分から開放されましたが、実質的な差別は残り、彼らは貧困に苦しんでいました。この状況を打破するために、大正3年（1914年）には「帝国公道会」が組織され、融和運動が展開されました。この運動は、部落民の経済向上と意識啓発を目指し、差別をなくそうとするものでした。しかし、これは国粋主義的な色彩が強く、後の運動に限定的な視野を持たせる要因ともなりました。

第一次世界大戦やロシア革命の影響で、革新思想が流入すると、融合にとどまらずより積極的な同和を求める動きが芽生えます。この流れの中で、若者たちによる「燕会」が開催され、彼らは「自らの力で部落の解放を勝ち取る」という運動を構想しました。その結果、大正11年1月に水平社は創設されます。

創設と活動

水平社の設立は、1922年3月3日に京都で創立大会が行われたことにより正式に実現しました。大会では、差別を許さないという決意が表明され、集まった代表者たちがその意義を噛みしめました。特に、16歳の少年が実際の差別の現実を報告し、変革を呼びかけたことは、青年層の参画を印象付けるものでした。

創設当時、水平社は融和運動とは一線を画し、差別の根本にある「差別する側」に問題があることを強調しました。初代委員長には南梅吉が就任し、部落解放に向けた草の根の活動が展開されることに。

その後、水平社は強い野心を持ちつつ、朝鮮の被差別民と連携するなどして差別撤廃運動を進めましたが、内部の意見対立が続くことになります。特に左派と右派の対立が顕著になり、一部は日本水平社を設立し、従来の融和路線に戻る動きが見られました。

低迷と復活

1920年代末から1930年代初頭にかけて、水平社内部の対立や運動の低迷が続きました。労農運動の流れの中で、部落差別は経済的な問題と結び付けられるようになり、労働者との連携が模索されましたが、これが内部の対立をより激化させました。

しかし、1933年に開催された第11回大会で新たな方向性が決定され、再び運動の勢いが戻りつつありました。差別糾弾運動が高まり、部落解放のための活動が再展開されました。しかし、その後の日中戦争の影響により、水平社も戦争協力に巻き込まれることに。

1942年には、団体としての機能を停止し、消滅の道を辿りました。戦後、部落解放全国委員会が結成され、水平社運動の再興が図られることになりました。

まとめ

全国水平社は、日本における部落解放運動の一環として非常に重要な役割を果たしてきました。その活動は、多くの障害を乗り越えながらも、差別の撤廃や人権の獲得を目指して続けられました。現代においても、彼らの闘争は歴史的意義を持ち続けています。

もう一度検索