全日空訓練機下地島離陸失敗事故

全日空訓練機下地島離陸失敗事故

1988年5月30日午前11時38分頃、沖縄県の下地島空港において、全日本空輸（ANA）のボーイング737-200型機が離陸訓練中に滑走路を逸脱する事故が発生しました。

事故の概要

事故当時、同機は片方のエンジンを停止した状態での離陸訓練を実施していました。訓練には操縦教官1名と訓練生2名の計3名が搭乗していましたが、幸いにも死傷者は発生しませんでした。

離陸許可を得た際、管制塔からは風向きが西微北から東微南へ、風速20ノット（約10m/s）という気象情報が伝えられました。訓練生はシミュレーターで16回、実機で4回の訓練を受けていましたが、それまでの訓練で経験した横風は最大でも10ノット程度であり、この日の強い横風は未経験のものでした。

離陸滑走を開始し、離陸決心速度に達したところで、教官の指示により左側エンジンの推力がアイドル状態に絞られました。これは事前に計画された訓練内容の一部でしたが、訓練生の過大なエルロン操作と過小なラダー操作により、機体の左への傾きを制御できなくなりました。教官が直ちに操縦を交代し、左側エンジンの出力を回復させるとともに機体の姿勢を修正しようとしましたが、間に合わず、左主翼の端が地面に接触してしまいました。

機体はそのまま滑走路を逸脱し、芝生帯を横切ってエプロン内で停止しました。機体各部を損傷し、左主翼からは燃料漏れが発生しましたが、幸いにも負傷者は出ませんでした。この事故により、下地島空港の滑走路は24分間閉鎖されました。

事故原因

航空事故調査委員会は、1988年9月30日に本事故の調査報告書を発表しました。報告書によると、事故原因は強い横風の中での訓練であったにも関わらず、横風に対応する十分な訓練を受けていなかった訓練生の操舵が不適切であったため、機体が左に急旋回し、左に傾いて左翼端などを接地させたことと結論付けられました。

教官は即座に回復操作を試みましたが、左翼端が接地するまでの時間が極めて短かったため、適切な対応ができませんでした。この事故は、パイロットの訓練における横風への対応の重要性を浮き彫りにしました。

その後

事故を起こした機体は、修理後に再び使用されましたが、1998年に売却されています。

参考文献

航空事故調査報告書 報告書番号63-9（1988年10月28日）

関連項目

全日空の航空事故およびインシデント

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