全装軌車搭載型 キト

全装軌車搭載型キトについて

全装軌車搭載型キト（ぜんそうきしゃとうさいがた キト）は、日本陸軍が試作した自走式の対空砲であり、しばしば対空戦車とも称されますが、実際には装甲車に分類されるため、戦車とは異なります。名称の「キト」は、「機関砲搭載型」の略であるという説も存在します。

開発の背景

この装甲車は、1937年に制定された九八式高射機関砲の導入が契機となりました。日本の高射砲連隊や独立高射砲大隊において、機関砲の配備が始まりました。しかし、当時はすぐに装備できる状況ではなかったため、トラックの上に機関砲を配置して即座に射撃する方法が提案されました。その提案に基づき、九四式六輪自動貨車を利用して自走式に改良され、正式に制式化されました。

この流れは、他の型式においても影響を与え、装軌車への搭載も試みられました。最初の実例は、九七式軽装甲車によるもので、路外での走行性能が求められる中、戦車に搭載される実験が行われました。

構造と設計

全装軌車搭載型キトの改造は陸軍技術本部が担当しました。具体的には、九七式軽装甲車の砲塔を取り外し、九八式高射機関砲を新たに搭載する作業が行われました。この重い砲を搭載するためには、脚部の改造が必要でしたが、技術的には搭載が可能とされました。ただし、搭載スペースには限界があり、防楯を設置することが困難でした。もし防楯を設けると、操縦手が車両に乗り込むのが難しくなり、逆に防護のない状態で機関砲の周囲に砲手と装填手が密集する状況を招くことになりました。

さらに、補強のために誘導輪のサスペンションが二重構造とされましたが、走行安定性においては十分な効果が得られませんでした。機関砲を装甲車の上に搭載するためには、レールを利用して後方から持ち上げる手順が必要で、この作業には多くの手間がかかりました。特に、車輪を用いて行った際には、その車輪は装甲車の後部に設置されました。

結果と評価

この構造と施工は画期的であったものの、全体的に見てサイズが小さすぎたため、防弾性能、走行能力、操砲のしやすさから見て不十分とされ、最終的にこの車両の採用は見送られました。日本陸軍における装甲車や自走式対空砲の開発は、当時の技術や戦況の中で多くの課題を孕んでおり、全装軌車搭載型キトもその一つに過ぎません。

参考文献

• - 高橋昇「日本陸軍が試作した対空戦車/自走砲」『PANZER』2008年3月号、アルゴノート社、2008年。
• - 佐山二郎『機甲入門』光人社NF文庫、2002年。ISBN 4-7698-2362-2
• - 佐山二郎『大砲入門』光人社NF文庫、2008年。ISBN 978-4-7698-2245-5

関連項目

• - 大日本帝国陸軍兵器一覧

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