九四式六輪自動貨車

九四式六輪自動貨車

九四式六輪自動貨車は、1930年代の中頃に大日本帝国陸軍によって開発されたトラックであり、一般的には九四式自動貨車または九四式トラックとして知られています。本車両は主に日中戦争やノモンハン事件、さらに太平洋戦争において日本軍の重要な輸送手段として使用されました。

概要

この自動貨車は、陸軍の機械化部隊や歩兵部隊、さらには後方支援部隊において、兵員や貨物の輸送に広く利用されました。特に、特殊な地形でも運行可能であり、高い信頼性を備えた設計が求められました。堅牢な構造と効率的な部品の使用が特徴であり、商工省が定めた標準部品と高い互換性を持つため、整備も容易でした。また、整備面でも配慮され、片手の工具で組み立てや分解ができる設計が施されています。

この貨車は、普通のトラックとしての運用にとどまらず、野戦砲や高射砲の牽引車に改造されるなど、様々な用途に対応する能力も持っていました。さらに、各部隊での特別な要求に応じて改修が行われ、多用途に対応できる柔軟性があります。

性能と構造

九四式六輪自動貨車は、前2輪と後4輪という配置を持ち、駆動力は前部のエンジンから後部の4輪に伝達されます。サスペンションはボギースプリングサスペンションが採用されており、道の上では時速60kmの速度が可能で、悪路でも運動性を発揮します。特に後輪には履帯を装着することで、半装軌車両としての運用も可能です。

エンジンは九三式六輪乗用車と共通するもので、軍用の調整が施されています。ガソリンエンジンで最大出力68馬力を誇る一方、後にディーゼルエンジン型も開発され、これにより品目が区別されました。輸送機能をサポートするため、変速機は4段前進と1段後退が可能であり、技術的には旧式の要素が残っていましたが、耐久性を重視した設計がなされています。

ブレーキには旧式の機械式が採用されており、前輪にはブレーキが装備されていません。これは、当時の陸軍が油圧式ブレーキに対する信頼が薄かったためです。運転席は気候に応じた保護型で、最大3名までの乗車が可能です。荷台は広く設計され、使い勝手も考慮されています。

審査経過

九四式六輪自動貨車の開発は、満州事変を受けて陸軍が国産車の必要性を認識したことから始まりました。陸軍自動車学校が研究を行い、1934年には諸試験を重ねて性能を評価しました。試験では実際の運用条件下での実績が重視され、逐次改良が施されました。

最終的に、1937年に仮制式が制定されると、多くの部隊でこの六輪自動貨車が主力輸送車両として使用されることとなりました。

現在の状況

現在、戦後に改造され民間で使用されていた九四式六輪自動貨車は、日本自動車博物館で展示されています。このことからも、歴史的な価値を持つ車両であったことが伺えます。

諸元

• - 自重: 3.5t
• - 全長: 5.4m
• - 全幅: 1.9m
• - 全高: 2.7m
• - 最低地上高: 28cm
• - 軸間距離: 3.35m
• - 轍間距離: 前輪1.5m、後輪1.45m
• - 最大出力: 68hp
• - 燃料: 100l (約10時間行動可能)

このように、九四式六輪自動貨車は日本の軍事史において重要な役割を果たし、軍用車両としての性能が高く評価されました。

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