全逓東京中郵事件

全逓東京中郵事件

全逓東京中郵事件（ぜんていとうきょうちゅうゆうじけん）は、日本における公務員の労働基本権の限界が問われた重要な刑事事件です。この事件は、1966年10月26日に最高裁判所が下した判決により、多くの議論を呼び、公務員の権利に関する重要な判例となりました。

公判までの経緯

1958年の春、郵政に従事する全逓信労働組合（全逓）の幹部たちは、組合員の待遇改善のために東京中央郵便局で勤務する職員に対し、勤務中に職場集会への参加を促しました。この呼びかけに応じて、多くの職員が許可なく職場を離れました。これに対し、東京地方検察庁は、全逓の幹部に対して、郵便法第79条第1項に違反する罪を適用し、東京地方裁判所に公訴を提起しました。

下級審の判決

公判が開かれた東京地方裁判所では、郵便法第79条違反の教唆が主な争点となり、検察は幹部8人に対して懲役の求刑を行いました。しかし、1962年5月30日、東京地裁は職場大会が労働組合法に基づく正当な行為であると認定し、全逓幹部に無罪判決を言い渡しました。この判決は、一般の私企業での労働者の行動は合法であるとされる場合、同様の行為が公務員に適用されるべき義務があるとするものでした。

その後、1963年11月27日に東京高裁において判決が覆され、原判決の法解釈が誤りであるとされ、差し戻しが決定されました。一方、弁護側は最高裁への上告を行いました。

最高裁の判決

最高裁での議論は注目を集め、1966年10月26日に大法廷が開かれ、長部謹吾裁判官は前職での関与から回避されました。最高裁は東京高裁の判決を破棄し、再度東京高裁に差し戻す決定を下しました。判決では、労働基本権を保護する原則を扱いながら、以下の論点が重要視されました。

1. 公務員も憲法第28条に基づく勤労者であり、労働基本権の保障を受ける。
2. 公務員と私企業の労働者は、担当する職務の内容により異なる制約を受ける。
3. 労働基本権制限は合理的で必要最小限のものでなければならない。
4. 争議行為に対しては合理性に基づく制約が必要であり、特に必要な場合に限り刑事制裁を科すことが許される。

多数意見では、郵便業務の特殊性が国家生活に与える影響から、それに伴う争議行為に対し合理的制約が逃れられないとされました。特に、労働条件の向上を目的とした争議行為は、暴力や政治目的が伴う場合を除き、刑事制裁の対象にはならないといった考えが述べられています。

反対意見としては、全ての争議行為が公共企業体等労働関係法に基づき違法であるとし、法令の一貫性が求められるとの指摘がありました。また、郵便法第79条に関する解釈の明確化も議論されました。

裁判のその後

最高裁の判決によって、事件は再度東京高裁に戻されましたが、1967年9月6日には全逓幹部に対して再び無罪判決が下され、この判決はその後も確定しました。本事件は公務員の労働基本権についての重要な法的議論を引き起こし、現在の労働環境における公務員の権利のあり方に影響を与えています。

関連資料

全逓中郵判決の詳細など、さらなる資料を参照し、事件の経緯や判決の影響を深く理解することができます。

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