長部謹吾

長部謹吾（おさべ きんご）は、1901年4月1日に新潟県で生まれ、1991年12月8日にその生涯を閉じました。彼は、検察官としてその名を歴史に刻み、最高検察庁次長検事、そして最高裁判所判事という司法の要職を歴任しました。

長部は、1925年3月に東京帝国大学法学部独法科を卒業しました。当初は日本興業銀行に勤務しましたが、その仕事が「性に合わない」と感じ、わずか2ヶ月で退職しました。その後、1926年4月に司法官試補となり、1927年12月には検事として新たな道を歩み始めました。大審院検事などを経て、1951年2月には長野地方検察庁の検事正に就任しました。

その後、東京高等検察庁次席検事、最高検察庁検事、高松高等検察庁検事長、広島高等検察庁検事長といった要職を歴任しました。東京高検次席検事時代には、造船疑獄という大きな事件に直面しましたが、胃潰瘍の手術のため、その捜査にはほとんど関与しませんでした。広島高検検事長時代には、八海事件の偽証捜査を指揮しました。

1959年6月、長部は最高検察庁次長検事に就任しました。そして、1963年4月5日には最高裁判所判事という司法の頂点に立ちました。判事就任にあたり、「法律と良心に従い、冷静な判断を下せる裁判官になりたい」と抱負を述べています。

最高裁では、全逓東京中郵事件の審理に際し、最高検次長検事時代に一審無罪判決に対する控訴申し立てを指揮したという経緯から、審理を回避しました。これは、公平な裁判を行うための配慮でした。

長部は、1971年3月に定年を迎え、その長いキャリアに幕を閉じました。その間、検察官、そして裁判官として、日本の司法に大きな貢献をしました。長部の次男は、小説家の黒井千次（本名：長部舜二郎）であり、孫にはフジテレビのプロデューサーである長部聡介がいます。

長部謹吾の足跡は、日本の司法史における重要な一ページを飾っており、彼の功績は後世に語り継がれるでしょう。

参考文献

野村二郎『最高裁全裁判官：人と判決』三省堂、1986年。ISBN 9784385320403。
野村二郎『日本の裁判史を読む事典』自由国民社、2004年。ISBN 9784426221126。
* 田中二郎、佐藤功、野村二郎『戦後政治裁判史録 3』第一法規出版、1980年。ISBN 9784474121133。

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