八つ墓村 (1977年の映画)

映画『八つ墓村』について

『八つ墓村』（やつはかむら）は、1977年に放映された日本の映画で、監督は野村芳太郎が務め、横溝正史の同名小説を原作としています。この映画は、1960年代後半に横溝作品が人気を博した時期に制作され、松竹が1975年に実現を決定しました。野村監督をはじめ、脚本家の橋本忍、撮影の川又昂、音楽の芥川也寸志といった製作陣が集結し、2年以上の時間をかけ、約7億円（現在の約15億円に相当）の制作費を投じました。その結果、映画は19億8600万円の興行収入を記録し、松竹の歴史の中で特筆すべき大成功を収めました。

異色の表現

本作の特徴は、事件を単なる「祟り」に見せかけた犯罪ではなく、真実の「祟り」として描写した点にあります。主要キャラクターの数を大幅に減らし、ストーリーの流れをシンプルにすることで、観客に直接的な影響を与える演出がなされています。推理物であるにもかかわらず、金田一耕助による謎解きの部分は短縮され、物語の終局は鍾乳洞という背景を活かした恐怖描写に置き換えられています。これにより、推理劇としての要素を持ちながらも、ホラー映画としてのオカルト的な要素が強調されているのです。

公開当初、松竹セントラル劇場では多くの観客が詰めかけ、劇場の外まで人々の列が続きました。入場時には、八つ墓明神のレプリカをくぐる演出がされ、観客の期待感を煽りました。テレビ放送では、1979年にフジテレビ系列で初めて放送され、関東地区で34.2%という高視聴率を達成しました。

ストーリーのあらすじ

物語は、首都圏空港で航空機誘導員として働く寺田辰弥が、大阪の法律事務所を訪れるところから始まります。そこで初めて出会った母方の祖父、井川丑松が突然死亡する。辰弥は、父方の親戚である森美也子の導きで、故郷の八つ墓村へと向かいます。彼は母の鶴子が別の地で再婚し、幼少期に故郷を出る際の経緯を知らなかったことを知ることになります。

辰弥は母から伝えられた多治見家の歴史を聞かされ、戦国時代に遡る悲劇的な出来事を知ります。また、彼の父、多治見要蔵も怖ろしい事件の主犯であったことが次第に明らかになり、村では再び連続殺人が発生します。私立探偵の金田一耕助が事件の調査のために村に現れることで、物語は推理と恐怖の渦に巻き込まれていきます。

キャストとスタッフ

本作では、主人公の寺田辰弥を萩原健一が演じ、探偵金田一耕助役には渥美清が抜擢されました。全体的に、数多くの実力派俳優たちがキャストに名を連ねており、それぞれの役柄が物語の深みを加えています。濃茶の尼の「祟りじゃ〜っ」というセリフは流行語となり、大人気コンビザ・ドリフターズがコントに取り入れてさらに話題を呼ぶなど、文化的な影響も大きかったのです。

製作の舞台裏

製作の過程には、様々な苦労がありました。1975年に企画が持ち上がった当初は、角川春樹との間に確執が生じ、松竹主導で製作が進められました。特に脚本については、最初に予定されていた作家の内容に不満を持った監督が橋本忍に書き直させるなど、制作の一貫性が強調されました。また、作品の撮影には時代背景の逆転などの工夫がみられ、村の風景と現代的な要素を対比させることにより、多層的なメッセージを生み出しています。

まとめ

『八つ墓村』は、日本映画史における代表作ともいえる作品で、緻密な製作とキャラクター描写が光る作品です。映画の観客を恐怖とサスペンスの世界に引き込む工夫は、今なお評価され続けています。

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