八九式艦上攻撃機

八九式艦上攻撃機について

八九式艦上攻撃機（はちきゅうしきかんじょうこうげきき）は、日本海軍の艦上攻撃機として昭和7年（1932年）に制式採用された航空機です。この機体は、イギリスのブラックバーン社によって設計され、製造は日本の三菱重工業が行いました。八九式は、一三式艦上攻撃機の後継機として位置づけられていますが、実際の生産数は一三式の半分程度に留まりました。海軍における記号はB2Mとして知られています。

開発の経緯

日本海軍では、1925年に一三式艦上攻撃機が採用され、以降その後継機の開発が求められました。1928年には、三菱重工業、中島飛行機、愛知時計電機、川西航空機の4社による設計競争が行われ、その結果、三菱が提出したブラックバーン社の設計が採用されることとなりました。この決定は、八八艦隊の予算圧迫が影響したとも言われ、実物試作を行わずに設計書類や木型を審査する方法がとられました。三菱は、過去に戦闘機の採用で敗北した経験から「艦上攻撃機は自社製にこだわる」と強い意気込みを持ち、ブラックバーン社に加えてハンドレーページ社やスミス技師にも設計を依頼しました。

試作1号機はイギリスで製作され、1930年に日本に届きました。機体は鋼管骨組みに羽布張りの複葉機であり、ブラックバーン社の特徴が色濃く残る無骨なデザインが特徴的です。後に三菱で製作された試作機を用いて様々な改修が行われ、最終的に八九式が採用されました。

性能と評価

三菱は、ハンドレーページ社のオートマチック・スロット翼の製造権を購入し、失速防止装置を機体に取り付けるなどの努力を重ねましたが、実際の性能は鈍重で故障が多発したため、多くの批判を受ける結果となりました。特に1937年に発生した杭州空襲において、八九艦攻部隊が全滅するという大きな損失を被ったこともあり、八九式艦上攻撃機は第一線から退くこととなります。

直接的な戦果は上げられなかったものの、この機体を通じて得られた金属式機体設計や生産技術は、後の航空機開発において貴重な経験として活かされました。1935年には、従来型の一号と、少し速度を増した二号の2タイプがラインアップされています。

スペック

• - 全長: 10.18m
• - 全幅: 14.98m
• - 全高: 3.60m
• - 全備重量: 3,600kg
• - エンジン: 三菱ヒ式 液冷12気筒 650hp×1
• - 最大速度: 228km/h
• - 航続距離: 1,759km
• - 武装: 7.7mm機銃×2、爆弾800kgまたは魚雷×1
• - 乗員: 3名

生産数は204機に達しましたが、その性能や信頼性の不足から、八九式艦上攻撃機は日本海軍の主力機にはなりませんでした。日本の航空機技術の独自の進化の一端を担った機体であったと言えるでしょう。

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