八代亜紀 お宝シリーズ 第一弾 忘れないでね

八代亜紀「忘れないでね」をめぐる騒動

2025年4月21日、八代亜紀のベストアルバム「八代亜紀 お宝シリーズ 第一弾 忘れないでね」がニューセンチュリーレコードから発売されました。しかし、このアルバムは発売前から大きな波紋を呼び、様々な議論を呼ぶこととなりました。

アルバム概要

このアルバムは、八代亜紀が20代から30代にかけて収録した楽曲の中から、「舟唄」「夢芝居」「石狩挽歌」「つぐない」「海猫」「恋の町札幌」「命火」「くちなしの花」「氷雨」「雨の慕情」といった代表的な10曲を厳選して収録したものです。八代亜紀の歌唱力と表現力が最も輝いていた時期の楽曲を網羅した、ファンにとっては貴重な一枚となるはずでした。

封入写真をめぐる騒動

問題となったのは、アルバムに封入された特典写真でした。ニューセンチュリーレコードは、八代亜紀のフルヌード写真2枚を封入したのです。これらの写真は、八代亜紀が24歳から25歳頃に愛人関係にあったディレクターの男性が撮影したものでした。

ニューセンチュリーレコードは、八代亜紀の楽曲約260曲の原盤権などを保有していると主張しています。同社によれば、1986年に八代亜紀が日本コロムビアに移籍した後、以前の所属先であるセンチュリーレコードが経営難に陥り、その際にニューセンチュリーレコードの社長が原盤権や会社の物品を買い取ったとのことです。その中には八代亜紀の写真も含まれており、売買契約書も存在すると主張しています。

しかし、八代亜紀が生前に所属していたミリオン企画の社長が立ち上げた八代ミュージック&ギャラリーは、八代亜紀の権利物の管理を行っていますが、今回のアルバム発売の許諾は得ていないとされています。

ニューセンチュリーレコードの社長は、今回の発売理由について、2024年に八代亜紀の自宅が売却されたことを知り、彼女の思い出をもっと長く残したいと考えたこと、そして八代亜紀の個人事務所が解散して別の会社が設立された事情を知り、彼女の遺産が食い潰されているのではないかと危惧したことを挙げています。また、自身は筋の通っていないことが嫌いで、今回の発売が暴露扱いされても構わず、批判される謂れはないと主張しています。なお、自宅売却は八代亜紀の遺言であるとされています。

発売中止を求める声と販売状況

この問題を受けて、発売中止を求める声が多数上がりました。大手通販サイトでは流通会社から出荷が停止され、Amazon、タワーレコード、楽天ブックス、Yahoo!ショッピング、Joshin webショップなどで予約ができなくなりました。レコード店での販売も困難になったため、ニューセンチュリーレコードの社長は現金書留による直販を行うとしました。

各界からの批判

この問題に対しては、武田鉄矢、田中健、松山千春、近田春夫といった芸能界の関係者だけでなく、八代亜紀の出身地である熊本県の知事である木村敬氏、八代市市長の中村博生氏、そしてニューセンチュリーレコードの所在地である鹿児島県の知事、塩田康一氏からも否定的な意見や批判が寄せられました。

法的な問題

八代ミュージック&ギャラリーは、今回の出来事を「極めて不愉快な出来事」と捉え、「絶対に許すことはできない」として、遺族や弁護士と協議し、刑事民事問わずあらゆる手続きを行うとしています。同社は、2025年3月27日に弁護士を通じてニューセンチュリーレコードに対し、写真の使用などをしないように求める通知書を送付しましたが、4月14日までに回答はなかったとのことです。

弁理士の福地武雄氏は、故人の写真などを含む追悼作品を無断で発売することは、肖像権やパブリシティ権の侵害に当たる可能性があると指摘しています。また、写真の著作権を撮影者が持っていたとしても、ヌード写真の場合はプライバシー権や人格権の侵害、名誉毀損に当たる可能性もあるとし、遺族による販売差し止めや損害賠償請求の可能性も示唆しています。

弁護士の服部啓一郎氏は、八代亜紀が写真の公表に同意していたとは考え難いとして、リベンジポルノ防止法違反の可能性を指摘しています。

志學館大学法学部准教授の淵脇千寿保氏は、名誉毀損は死者に対しては虚偽によるものでないといけないため、今回のケースでは難しいとの見解を示しています。

弁護士の八代英輝氏は、写真の権利が本当に移動しているのか疑問であることや、恐喝未遂にもあたる事案であると指摘しています。

弁護士の橋下徹氏は、ヌード写真は性器が露出していないとわいせつ物頒布等罪にはならないものの、今回のアルバム購入者や転売者は権利侵害になる可能性があると指摘しています。また、写真の売買契約についても、個人的な写真が含まれているのか、そのようなものまで売買できないのではないかと疑問を呈しています。

今回の騒動は、故人のプライバシーや権利、そして遺族の感情をどのように尊重すべきかという、非常にデリケートな問題を提起しています。今後の法的判断や関係者の対応が注目されます。

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