石狩挽歌

「石狩挽歌」（いしかりばんか）は、1975年6月25日に発売された北原ミレイの8枚目のシングルです。

作詞はなかにし礼、作曲は浜圭介が手掛け、同年の日本作詩大賞で作品賞を受賞しました。2007年には、シングル「雨の思い出」のカップリングとして、また2008年にはアルバム「全曲集〜雨の思い出〜」に、テンポを速めた約3分30秒の新録バージョンが収録されています。

タイトルの「挽歌」とは、エレジー、つまり悲しみを表現した歌を意味します。この歌は、石狩の海でのニシン漁を舞台に、大きな夢を抱きながらもそれを叶えられずに終わってしまう男と、そんな男と人生を共にする女の心情が、鮮やかな情景描写とともに歌われています。

作詞を担当したなかにし礼は、自身の幼少期の体験や、兄に対する複雑な感情、そして人生に対する深い想いをこの作品に込めています。なかにしには15歳年上の兄・正一がおり、兄の破滅的な行動やトラブルが彼の人生に深く影響を与えました。幼少期、なかにし家は貧困にあえぎ、兄は一攫千金を狙ってニシン漁に挑むも、大漁に満足せず、本州で高く売ろうとした結果、ニシンを腐らせてしまい、膨大な借金を抱えることになりました。一家は離散し、なかにしの心には原体験ともいえる深い傷跡が残りました。

なかにしが作詞に行き詰まっていた時期、兄が「ニシンのことを書けばいい」と助言したことがきっかけで、この歌は誕生しました。ただし、自身の体験をそのまま表現しただけでは、聴く人の心に響かないと考えたなかにしは、共感できる言葉を詩に織り込むことを意識したと、テレビ番組で語っています。

歌詞には、貨客船の笠戸丸や、オタモイ岬（小樽市）の鰊御殿が登場します。1975年当時、ニシン漁は不振で、鰊御殿は寂れており、「オンボロロ…」と歌われています。この曲は、発売当時から有線放送で頻繁に流れ、瞬く間に日本人の心に深く刻まれました。その後、八代亜紀がテレビで歌唱したことをきっかけに、石川さゆり、坂本冬美など、数多くの歌手によってカバーされ、現在に至るまで歌い継がれています。

小樽市の祝津岬にある旧青山別邸には、石狩挽歌の記念石碑と、なかにし礼直筆の歌碑が設置されています。

収録曲

全曲作詞：なかにし礼／作曲：浜圭介
1. 石狩挽歌
編曲：馬飼野俊一
2. 別れのビギン
編曲：森岡賢一郎

カバーした主な歌手

八代亜紀
森昌子
石川さゆり
坂本冬美
細川たかし
氷川きよし
石原詢子
門倉有希
水森かおり
新井英一
中森明菜
舟木一夫
野路由紀子
憂歌団
岩佐美咲
なつこ
梅谷心愛
他多数

関連事項

北海道におけるニシン漁
北海道異体文字 - 歌詞に出てくる「古代文字」
桃岩荘ユースホステル - 起床時にこの曲が大音量でかかる。
土曜ドラマ (NHK)「白き抗争」（1983） - 本作を主題歌としている。
スーパー戦隊シリーズ「超獣戦隊ライブマン」 - 第46話で毒島嵐が特攻するシーンでこの曲のイントロが使用されている。

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