八切止夫

八切 止夫（やぎり とめお）とは

八切 止夫（やぎり とめお、1914年12月22日 - 1987年4月28日）は、日本の著名な小説家であり、自らが設立した日本シェル出版の代表を務めました。彼は戦前から戦後にかけて、耶止説夫というペンネームで冒険小説や推理小説を発表し、その後1960年代後半に八切止夫として歴史小説家としての活動を開始しました。独自の歴史観である「八切史観」を展開し、歴史を大胆に解釈する作品を多く手掛けました。

経歴

本名は矢留 節夫（やどめ せつお）であり、出身地については名古屋市説と横浜市説が存在しています。彼は旧制愛知一中（現在の愛知県立旭丘高等学校）を経て、日本大学専門部文学科で著名な作家・伊藤整から指導を受けました。1931年に同校を卒業した後、当時日本の委任統治領であったヤップ島で雑貨商を営んだ後、日本に帰国します。1939年には海軍報国隊のメンバーとしてオランダ領セレベス島に赴きます。

その後、彼は『新青年』第20巻16号に耶止説夫名義で『海洋冒険 珊瑚礁王国』を発表し、南方海洋文学というジャンルを切り開きました。しかし、大本営から執筆禁止の処分を受けることになり、1941年には小一原敦子と結婚します。彼の探偵小説研究に関わる資料については、再評価が進む中、実際の名義についてさまざまな議論が交わされています。

東京では既製服店を経営するも、1992年から満州に移り、大東亜出版を設立し本を刊行しました。1944年には満州で長男が誕生しますが、戦後は満州から引き揚げ、雑誌『生活クラブ』を出版します。しかし、数号で廃刊となってしまいました。商業の失敗が続き、家庭用消火器を扱う会社を興しましたが、知識人や批評家からの厳しい評価により倒産してしまいます。

その後、日本大学芸術科の講師や明治大学助教授を経て、1964年に発表した短編『寸法武者』が第3回小説現代新人賞を受賞します。この受賞を契機に、彼は文筆活動を本格化しました。独特な性格から出版界での扱いは厳しいものでしたが、自ら日本シェル出版を設立し、自由に親しみやすい著作を発表し続けました。

評価と影響

八切止夫は、歴史に関する驚くべき仮説を多数発表したことで知られています。たとえば、彼の著作には「上杉謙信は女性であった」や「織田信長暗殺は明智光秀ではない」という考え方が含まれており、これらは彼自身が「八切史観」や「八切意外史」と呼ぶ作品群において表現されています。彼は最盛期において年間20冊以上を大手出版社から出版し、多くの読者に支持されました。

しかし彼の作品は学術的な評価が必ずしも高くなく、「歴史書というよりも、娯楽性に富んだ歴史フィクション」として捉えられることが多かったため、アカデミックな場での影響は限定的でした。特に桑田忠親による批評が響き、「史料の取り扱いに問題がある」と指摘されることがありました。

また、八切は『サンカ民俗学』や『サンカの歴史』などの著作を通じ、サンカ研究でも知られ、多くの著作が2000年代に再評価されました。さらに、文化や歴史に関する独自の視点が新左翼系の思想家との結びつき、影響を与えた点も興味深いです。

彼が展開した奇想天外な仮説は今なお話題となっており、最新の研究でも言及されることがあります。たとえば「仏教の布教には大麻が用いられた」とする主張や、徳川家康に関する影響力の強い考察などは、多くの論争を引き起こしています。

八切止夫の作品や伝えたい思想の全ては、彼の生涯を通じての多彩な経験に根ざしており、それが彼の独特な文体や視点を形作っています。彼の影響は、今後の研究や文学にも大きな影響を与える可能性を秘めています。

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