八剣神社 (諏訪市)

八剱神社（やつるぎじんじゃ）

長野県諏訪市にある八剱神社は、諏訪大社上社の摂社であり、地元の人々から厚く信仰されている神社です。この神社は、八千矛神、日本武尊、誉田別尊の三柱の神を祀っています。

由緒

八剱神社の始まりは、諏訪湖の中にある高島の里に鎮座していたことに遡ります。諏訪湖の造船の費用で建てられたと伝えられています。その後、豊臣秀吉が築城した高島城の建設に伴い、現在の場所に移されました。江戸時代には、高島藩の諏訪家が城の守護神として崇敬し、明治時代以降は小和田村の産土神として、地域住民の信仰を集めてきました。

諏訪湖御渡神事

八剱神社で最も特徴的な神事の一つが、御渡神事（みわたりしんじ）です。一般には「御渡り拝観の神事」として知られており、神社の神職によって執り行われます。

御渡観測から注進式まで

諏訪湖で御渡（氷の隆起）が観測されると、神社では臨時の総代会を開き、拝観式の日取りを決定します。その後、宮司をはじめとする神職や氏子総代は、自宅の門戸に注連縄を張り、心身を清めて神事に臨みます。拝観式当日には、まず社殿で修祓を行い、諏訪湖へと向かいます。湖畔では、一之御渡、二之御渡、佐久之御渡を拝観し、湖岸の状況を詳しく検分します。

奉告祭と年占

拝観後、一行は社殿に戻り、御渡の状況を祭神に報告する「奉告祭」を行います。この祭りの後、御渡の状況をもとに、その年の農作物の作柄、世の中の吉凶、気候などの年占を行います。この年占の結果は、「注進状」としてまとめられます。

御渡注進式

後日、宮司と氏子総代は諏訪大社上社へ出向き、「御渡注進式」を行います。この式では、注進状の内容を神前に捧げます。この報告を受けた諏訪大社は、その内容を宮内庁と気象庁に報告することが恒例となっています。

近年の御渡神事

直近では、2013年に御渡神事が執り行われ、1月22日に御渡が観測され、1月25日に拝観式、2月17日に注進式が行われました。

御渡がない場合

御渡が観測されない年でも、「奉告祭」と「注進式」は行われます。その際は、「御渡は無かった」という報告がなされます。特に御渡のなかった年の諏訪湖は「明けの海」と呼ばれます。

注釈

この神事は、自然現象である御渡を通じて、人々の生活と自然のつながりを深く意識させる、貴重な伝統行事です。

参考文献

『信州の文化シリーズ 寺と神社』1981年 信濃毎日新聞社
谷川健一 編『日本の神々 -神社と聖地- 9 美濃・飛騨・信濃』2000年 白水社

関連項目

諏訪市の神社
諏訪大社
諏訪湖
手長神社
足長神社

外部リンク

八剱神社（諏訪市）
* 諏訪神仏プロジェクト - 諏訪信仰と神仏習合と神仏分離の歴史のプロジェクト

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