八女茶

八女茶（やめちゃ）

八女茶は、福岡県八女市とその周辺地域（筑後市、広川町など）で生産される日本茶のブランドです。福岡県内産の茶葉として知られ、その生産量は全国6位を誇ります（平成21年度）。これは日本茶全体の約3%に相当します。

八女茶の特徴

八女茶の栽培地域は、筑後平野南東部の山間部に位置し、筑後川・矢部川流域に広がっています。この地域は、肥沃な土壌と霧深い気候に恵まれ、お茶の栽培に最適な環境です。

豊かな土壌: 筑後川と矢部川によって運ばれた土砂が堆積した沖積平野であり、お茶の生育に必要な養分が豊富です。
霧深い気候: 朝霧や川霧が発生しやすく、太陽光を適度に遮ることで、お茶の旨味成分であるアミノ酸（テアニンなど）の生成が促進されます。
内陸性気候: 日中の気温が高く、夜間は冷え込むため、お茶の品質を高めるのに適しています。
豊富な降雨量: 年間1600mm～2400mmの降雨量があり、お茶の生育に必要な水分が十分に供給されます。

これらの地理的・気候的条件が、八女茶独特のコクと甘みを生み出しています。特に、霧深い山間部で栽培されるお茶は、古くから「天然の玉露茶」として珍重されてきました。

八女茶の歴史

八女茶の起源は、室町時代に周瑞禅師が中国から持ち帰った茶の種と製茶法を、八女市黒木町の庄屋に伝授したことに始まります。周瑞禅師が霊巌寺を建立した際、中国の霊巌山寺の風景に似ていると感じたことがきっかけとされています。

江戸時代には、「鹿子尾茶」として京阪地方で人気を博しましたが、当時はまだ栽培方法が確立されておらず、生産量は安定していませんでした。しかし、江戸時代後期には宇治式製茶が伝えられ、八女でも煎茶の生産が始まりました。

明治時代に入ると、粗悪な茶の輸出が問題となり、政府は茶の取締りを強化しました。その後、一時的に紅茶の生産が奨励されましたが、大正時代に入ると再び緑茶の生産に力が入れられるようになります。

大正14年（1925年）には、複数の地域で生産されていたお茶を「八女茶」として統一することが提唱され、八女茶ブランドが確立しました。以降、八女茶は高級茶として全国的に知られるようになりました。

八女茶の種類

八女茶には、煎茶、玉露、抹茶など、さまざまな種類があります。

玉露: 八女茶を代表する高級茶。覆いをかけて栽培することで、旨味成分を凝縮させています。伝統本玉露は生産量日本一を誇ります。
煎茶: 八女茶の一般的なお茶。爽やかな香りとすっきりとした味わいが特徴です。
* 抹茶: 抹茶は、茶葉を粉末状にしたもの。茶道で用いられるほか、お菓子や料理にも使われます。

八女茶の現在

現在、八女茶は日本有数の高級茶として、国内外で高く評価されています。特に玉露は、全国茶品評会で多数の受賞歴があり、その品質の高さが証明されています。

八女市には、八女茶発祥記念館や茶の文化館などの施設があり、八女茶の歴史や文化に触れることができます。また、毎年八十八夜には献茶祭が催され、多くの人が八女茶の恵みに感謝します。

八女茶は、その長い歴史と伝統、そして豊かな自然環境によって育まれた、日本が誇るお茶のブランドです。

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