八巻智美

八巻 智美

八巻 智美氏は、1971年4月12日に福島県郡山市で生まれた、日本の車椅子アスリートです。同時に、郷里である郡山市の職員としても活躍しています。

困難を乗り越えて

その人生は、順風満帆ではありませんでした。中学校の管弦楽部でコントラバスに熱中していた2年生の時、突如激しい頭痛と吐き気に見舞われ、これにより右半身に麻痺が生じました。入院中にリハビリテーションに取り組む日々を送っていましたが、不慮の事故で病院の階段から転落し、脊髄を損傷するという更なる困難に見舞われます。

その後、福島県立安積第二高等学校通信制（現在の福島県立あさか開成高等学校）で学び、卒業。1992年には郷里である郡山市の職員となります。

スポーツとの出会いと競技への傾倒

転機が訪れたのは1994年。翌年に開催される全国身体障害者スポーツ大会の選手募集広告を目にした八巻氏は、友人たちと共に練習会に参加。これが障害者スポーツとの出会いとなりました。

障害者スポーツを始めてから3年後、車いす駅伝の福島県代表チームでエースとして活躍していた松浦辰雄氏と出会います。この出会いを機に、八巻氏は車いすマラソン競技に本格的に取り組み始めました。車椅子操作の技術やレース戦略などを学び、アスリートとしての才能を開花させていきます。

世界記録とパラリンピックでの輝き

八巻氏の努力は実を結び、世界トップクラスの実績を上げるようになります。

2007年10月28日に開催された大分国際車いすマラソンでは、女子T52クラスで2時間9分50秒という驚異的なタイムを記録し、当時の世界記録を樹立しました。この記録は、2008年11月9日の同大会で自身がさらに2時間7分28秒と更新しています。

しかし、2008年に開催される北京パラリンピックには、八巻氏のT52クラスにおいてマラソン種目の設定がありませんでした。そこで八巻氏は、持ち前のスピードを生かし、短距離種目への挑戦を決意。厳しい参加A標準記録を突破し、日本代表の座を掴み取ります。

迎えた北京パラリンピック本番。八巻氏は、出場した女子200m車椅子（T52）および女子100m車椅子（T52）の両種目において、見事銀メダルを獲得するという快挙を成し遂げました。この時の記録、200mの37秒44と100mの21秒00は、いずれもアジア記録となりました。

主な競技記録

八巻氏の輝かしい競技歴の一部を以下に示します。

2006年6月11日 日本選手権 女子-T52 1500m 4分37秒06（日本記録）
2007年10月28日 大分国際車いすマラソン 女子-T52 2時間9分50秒（世界記録）
2008年4月20日 長野車いすマラソン大会 ハーフマラソン 女子-T52 1時間3分9秒
2008年7月6日 関東選手権 女子-T52 100m 20秒99（日本記録）
2008年9月11日 北京パラリンピック 陸上女子200m車椅子決勝-T52 37秒44（アジア記録、銀メダル）
2008年9月15日 北京パラリンピック 陸上女子100m車椅子決勝-T52 21秒00（アジア記録、銀メダル）
* 2008年11月9日 大分国際車いすマラソン 女子-T52 2時間7分28秒（世界記録更新）

現在の活動

現在もアスリートとして挑戦を続ける一方、各種障害者競技のイベントに積極的に参加し、障害者スポーツの普及と社会的な理解促進に尽力しています。自身の経験を通じて、困難に立ち向かう勇気と、スポーツが持つ力を伝え続けています。

八巻智美氏は、逆境を乗り越え、世界レベルで活躍したアスリートであり、また、障害者スポーツの発展に貢献する重要な存在と言えるでしょう。

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