大分国際車いすマラソン

大分国際車いすマラソン（おおいたこくさいくるまいすマラソン）は、国際障害者年が制定された1981年に第1回大会が開催されて以来、毎年秋季（主に10月末頃）に大分県大分市で開催されている、日本を代表する車いすマラソン大会です。

大会の概要

本大会は、フルマラソン（42.195km）とハーフマラソンが行われます。フルマラソンコースは、大分県庁前をスタートし、大分市営陸上競技場にフィニッシュする設定です。ハーフマラソンも、同一のスタート・フィニッシュ地点を用い、フルマラソンコースの一部を利用します。世界陸連（WA）および日本陸連（JAAF）の公認を受けているこのコースは、非常に平坦である点が大きな特徴です。海抜およそ5mと高低差がほとんどなく、いくつかの橋梁部を除けばほぼフラットな地形を活かしています。

このフラットなコース特性により、高速レース展開が期待でき、実際にこれまでに複数の車いすマラソン世界記録が大分の地で樹立されています。具体的には、T53/54クラスの男子ではハインツ・フライ選手（スイス）が1999年の第19回大会で、女子ではマニュエラ・シャー選手（スイス）と土田和歌子選手（東京都）が2013年の第33回大会で世界最高記録をマークしました。また、T52女子クラスでも八巻智美選手（福島県）が2008年の第28回大会で世界記録を樹立しています。

本大会は、2010年の第30回大会からは賞金レースとなり、世界のトップアスリートが集う舞台としての地位を確立しています。

コースの詳細

コースは主に、大分臨海工業地帯を横断する県道大在大分港線を利用しています。大野川によって形成された三角州の海岸沿いに位置するため、大きな標高差はありません。しかし、コース中には複数の橋があり、これらの地点で緩やかな上り下りが発生します。特に、スタート後約3km地点にある弁天大橋は、上りの勾配がきつく、重度の障がいを持つ選手（T51, T33/52クラス）にとっては、設定された5km関門通過の大きな難所となっています。

コースを構成する主要な公道には、国道197号、県道大在大分港線、県道鶴崎港線、そして複数の大分市道や橋梁（舞鶴橋、弁天大橋、原川橋、三海橋、大野川大橋、王ノ瀬大橋など）が含まれます。

観戦に適した場所としては、スタート直前の緊張感が味わえる大分県庁前、最初の起伏である舞鶴橋付近、そして難所として知られる弁天大橋周辺などがあります。スタート時間は、気温上昇やテレビ中継を考慮し、2016年大会以降はフルマラソンが午前10時、ハーフマラソンが午前10時03分に変更されています。

開催の経緯

本大会の開催は、当時のマラソン人気高まりと、車いす使用者の「マラソンを走りたい」という強い願いが背景にあります。1970年代、別府大分毎日マラソンの関連イベントに参加していた車いす使用者から、本格的なマラソンへの参加を求める声が上がりました。別府市で小規模な車いすロードレースが試みられましたが、十分な距離ではなく継続されませんでした。別府市の社会福祉法人「太陽の家」理事長であった中村裕博士は、車いす使用者の願いに応えるべく、別府大分毎日マラソンへの参加許可を関係機関に求めますが、当時の規則やコース上の制約から実現には至りませんでした。

このような状況の中、大分県は1981年の国際障害者年記念事業として、車いす単独のマラソン大会開催を計画します。国道197号のバイパス機能を持つ県道を利用することで、車いすレースに適した新たなコース設定が可能と判断され、中村博士の協力のもと大会実現に向けて動き出しました。当初は車いすマラソン競技に関する医学的データが少なかったため、試験的にハーフマラソンから開始されました。1981年、82年とハーフマラソンが開催され、選手の強い要望を受けて1983年からはフルマラソンが実現。ハーフマラソンはその後もフルマラソンへの登竜門として継続されています。中村博士はフルマラソンの開催を見届けた後、1984年に逝去しました。

大会運営

本大会は、多くの団体によって主催・共催・後援されています。主な主催者には、大分県、（公財）日本パラスポーツ協会・日本パラリンピック委員会、日本パラ陸上競技連盟などが名を連ねます。また、大分放送が共催、外務省やスポーツ庁などが後援しています。大会事務局は大分県庁障害福祉課内に置かれています。

大会運営は、ボランティアの存在が不可欠です。協賛企業の社会貢献活動として参加する企業ボランティアに加え、海外選手のための通訳ボランティアなども組織され、大会期間中には延べ2,000名以上のボランティアが活動しています。

本大会のユニークな運営体制として、スタート地点とフィニッシュ地点が異なるため、選手がスタート時に預けた日常用車いすをフィニッシュ地点へ運搬する必要があります。この重要な役割は、陸上自衛隊第41普通科連隊が長年担当しており、レースを終えた選手がスムーズに日常用車いすに乗り換えられるよう支援しています。

開会式は、レース前日に大分市内のガレリア竹町ドーム広場で行われます。

放送体制およびその他

大会の様子はメディアでも広く報道されます。ラジオ中継は1998年からOBS大分放送で、テレビ中継は2016年からOBS大分放送およびBS-TBSで放送されており、TBSとOBSによる共同制作体制が取られています。

その他、2000年には本大会を記念したふるさと切手が発行されています。また、スタート地点近くの舞鶴橋は映画『風が強く吹いている』のロケ地となり、フィニッシュ地点の大分市営陸上競技場付近は映画『恋空』のロケ地としても知られています。

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