八戸平原総合農地開拓事業

八戸平原総合農地開拓事業

八戸平原総合農地開拓事業は、青森県八戸市、階上町、岩手県軽米町を流れる新井田川流域の丘陵地帯を、農地として開拓した大規模な国家プロジェクトです。この事業は、食糧増産と水需要の増加という当時の社会的な課題に対応するために計画されました。

背景

事業区域は、青森県南と岩手県北の県境に位置し、新井田川とその周辺の丘陵地帯は標高差があり、降水量も少ないため、農業生産性が低い地域でした。藩政時代から蛇口伴蔵などが開発を試みましたが、資金難で頓挫していました。しかし、1950年代に再び計画が浮上し、1976年（昭和51年）に本格的な事業が開始されました。

事業内容

主な事業内容は以下の通りです。

農地造成: 未開墾地を農地として開拓
区画整理: 既存の農地を整理し、効率的な利用を促進
農道整備: 農作業に必要な道路を整備
農業用排水施設整備: 排水施設を整備し、農地の保全を図る
ダム建設: 農業用水の確保と洪水対策を目的とした世増ダムの建設

当初は水稲増産を目的としていましたが、国の農業政策の転換により、畑作を中心とする灌漑農業地帯の形成を目指すことになりました。世増ダムは、農業用水の確保だけでなく、青森県の新井田川総合開発事業における防災機能の強化、八戸圏域水道企業団と種市水道事業の上水供給という4つの事業者の共同事業として建設されました。

歴史

1960年代（昭和30年代）：世増ダム構想浮上
1976年（昭和51年）：八戸平原総合農地開拓事業開始
1987年（昭和62年）：新井田川総合開発事業開始
1998年（平成10年）：世増ダム本体工事着工
2004年（平成16年）：事業完了

開発データ

事業地区：八戸平原地区
受益面積：1,864ha
主要工事：ダム1箇所、頭首工1箇所、揚水機場2箇所、用水路94.3km、排水路4.2km、農地造成346ha、区画整理228ha

その後

2004年（平成16年）に事業は完了し、2009年からは世増ダムからの給水が開始されました。八戸圏域水道企業団の白山浄水場から周辺自治体への配水も行われています。また、世増ダムは洪水対策としても機能し、新井田川周辺地域の洪水被害軽減に貢献しています。しかし、節水技術の進歩や人口減少、農業生産の停滞などにより、水使用量が当初の計画よりも減少しているという課題も抱えています。

遺跡

世増ダム事業区域では、縄文時代の遺跡が発掘されており、畑内遺跡からはキノコをかたどった縄文土製品が出土しています。

関連情報

八戸平原
世増ダム
新井田川
東北農政局

参考文献

八戸平原開拓と世増ダム
八戸平原土地改良区
世増ダム概要（東北農政局北奥羽土地改良調査管理事務所）

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