八戸水力電気会社軌道

八戸水力電気会社軌道：幻の路面電車計画

八戸水力電気会社軌道は、大正時代から昭和初期にかけて、現在の青森県八戸市に計画された路面電車です。八戸水力電気株式会社によって計画されましたが、実現には至りませんでした。本記事では、この幻の路面電車計画について詳しく解説します。

計画の背景

路面電車の敷設計画が持ち上がったのは大正13年（1924年）のことでした。計画の中心人物は、八戸の酒造老舗「河内屋」の当主であり、当時の八戸水力電気株式会社社長であった橋本八右衛門です。この路面電車計画は、彼の事業拡大の一環として構想されました。

計画の概要

大正13年（1924年）8月29日、橋本八右衛門は内務省・鉄道省に対し、八戸町から小中野町を結ぶ路面電車の敷設特許を申請しました。その結果、昭和2年（1927年）に軌道特許状が許可されます。しかし、昭和初期の世界恐慌、そして昭和7年（1932年）の橋本八右衛門の死去が重なり、事業継続が困難となりました。同年、事業廃止の申請が行われ、八戸水力電気会社軌道は実現することなく終わりました。

路線データ（計画）

計画されていた路線の詳細は以下の通りです。

路線距離：3.6km（昭和6年度）
区間：荒町停留場（八戸町）- 湊橋停留場（小中野町）間
軌間：1067mm
動力：電気動力

沿革

1924年（大正13年）8月29日：内務省・鉄道省へ八戸町-小中野町間の路面電車計画の敷設特許を申請
1926年（昭和2年）4月20日：内務省・鉄道省より軌道特許状が下付
1929年（昭和4年）：東北本線の尻内駅（現在の八戸駅）への延長、連結計画を申請
1932年（昭和7年）12月14日：恐慌による起業困難を理由に電気軌道事業廃止を申請
1933年（昭和8年）1月16日：青森県知事より内務省へ関連書類の取り下げ
2月24日：軌道起業廃止が許可

事業費用・収支見込（計画）

建設費用や収支に関する見込みは以下の通りでした。

建設費用：16万円（当時の金額）
利用見込み：54,750人（年間）
収入見込み：3万2,850円
支出見込み：営業費1万7,002円50銭
利益見込み：1万5,847円50銭
運賃：6銭

停留場（計画）

計画されていた停留場は以下の通りです。

荒町停留場 - 十三日町停留場 - 八日町停留場 - 錦座前停留場 - 塩町停留場 - 下組町停留場 - 正部田停留場 - 小学校前停留場 - 湊橋停留場

これらの停留場は、県道の八戸鮫線と併用して敷設される予定でした。また、東北本線の尻内駅（現在の八戸駅）への延長計画もありました。

まとめ

八戸水力電気会社軌道は、大正時代に夢見られた八戸の路面電車計画でした。しかし、世界恐慌や橋本八右衛門の死去により、その夢は実現することなく終わりました。もし実現していれば、八戸の街の発展に大きく貢献したかもしれません。

参考資料

『新編八戸市史 近現代資料編2』八戸市、2008

関連項目

八戸町
* 錦座

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