八木幹夫

八木幹夫（やぎみきお）氏は、1947年 1月14日に神奈川県相模原市に生まれた日本の詩人です。長年にわたり教育者としても教壇に立ち、詩作のみならず、多岐にわたる文学活動を展開しています。

生涯と教育者としての歩み

相模原の地で育った八木氏は、地元の旭小学校、旭中学校を経て、1965年に神奈川県立厚木高等学校を卒業しました。高校時代には、詩や小説の世界に深く親しみ、朝日新聞への短歌投稿も行っていました。文学への情熱は、この頃から培われたと言えるでしょう。

1969年には明治学院大学文学部英文科を卒業。大学では新倉俊一氏のもとで英米詩を、山根謹爾氏から短歌を学びました。特に、新倉氏や入沢康夫氏から西洋詩の大きな影響を受け、これを契機に詩作を本格的に開始します。また、山口佳己氏にも師事し、西脇順三郎の詩に触れることとなります。さらに、仏文科の下村康臣氏との出会いは、生涯にわたる友情へと発展しました。

大学卒業後、八木氏は地元相模原市内の公立中学校で英語教師として教鞭をとります。36年間に及ぶ教員生活では、教科指導に加え、バスケットボール部の顧問を30年以上務めるなど、教育現場の第一線で活躍しました。教職を退いた後も、愛知淑徳大学大学院で非常勤講師を務めるなど、教育への情熱を持ち続けました。

詩人としての活動と受賞歴

八木氏の詩人としてのキャリアは、1983年に私家版として刊行された第一詩集『さがみがわ』から本格的に始まりました。この作品を通じて詩人の中上哲夫氏と出会い、これを機に辻征夫氏、井川博年氏、有働薫氏らと共に、小沢信男氏が主宰する「余白句会」に参加するようになります。この句会は、詩人としての交流と成長の場となりました。

『歴程』同人として活動する傍ら、精力的に詩作に取り組み、数多くの詩集を発表しています。特に、1995年に上梓した詩集『野菜畑のソクラテス』は、文学界で高く評価され、第13回現代詩花椿賞と第46回芸術選奨文部大臣新人賞という二つの権威ある賞を同年中に受賞するという快挙を成し遂げました。また、2008年には詩集『夜が来るので』で現代ポイエーシス賞を受賞しています。

なお、父の死後、約10年間にわたり作品の発表を控えていた時期もありましたが、その後再び活発な創作活動を再開しています。代表的な詩集としては、『少年時代の耳』『身体詩抄』『秋の雨の日の一方的な会話』『めにはさやかに』『夏空、そこへ着くまで』『八木幹夫詩集』（現代詩文庫）、『川・海・魚等に関する個人的な省察』などがあります。また、2013年には歌集『青き返信』を刊行し、短歌の世界にも足跡を残しています。

所属団体としては、日本現代詩人会会員、歴程同人、余白句会会員、ほっとジーン読書会主催など、詩壇の中心的な存在として活動しています。

研究・評論活動とその他の顔

八木氏は詩作だけでなく、西脇順三郎の研究者としても知られています。西脇の詩に深く傾倒し、その魅力に迫る評論『渡し場にしゃがむ女詩人西脇順三郎の魅力』を上梓しました。また、西脇へのオマージュを込めた詩集の編纂・刊行も行っています。

評論としては、講演録『余白の時間―辻征夫さんの思い出』などがあり、親交のあった詩人たちへの敬意も示しています。さらに、仏典を日本語で読みやすく翻訳した『日本語で読むお経仏典詩抄』を手がけるなど、その文学活動は多岐にわたります。

また、池袋のミッドナイト・プレスで開催される「山羊塾」で講師を務め、同出版社の媒体に詩やエッセイ「山羊散歩」を掲載するなど、後進の指導や詩の普及にも努めています。2018年10月からは、詩人の新川和江氏の後を受け継ぎ、産経新聞の朝刊に連載される『朝の詩』の選者を務めるなど、詩壇への貢献を続けています。

八木氏の作品は、音楽との融合も果たしています。詩集『野菜畑のソクラテス』中の作品は、作曲家の堀内貴晃氏や田中賢氏によってCD化されました。さらに、遠藤敦司氏主催の朗読グループ「ぐんま朗読塾」によって作品が朗読され、CD化されるなど、様々な形で読者・聴衆に届けられています。詩人、教師、研究者、選者など、八木幹夫氏は多様な顔を持つ文学者として、現代詩の世界に確固たる足跡を残しています。

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