八町駅

富山地方鉄道 八町駅

富山県富山市八町に設けられていた八町駅（はっちょうえき）は、富山地方鉄道射水線が運行していたかつての鉄道駅です。この駅は、射水線の廃止という歴史的な出来事に伴い、1980年（昭和55年）4月1日に廃駅となりました。地域にとって重要な交通結節点の一つでしたが、路線の終焉と共にその役割を終えました。

歴史をたどる

八町駅の歩みは、1924年（大正13年）10月12日に始まります。この日、越中電気軌道の手により富山北口駅から四方駅までの区間が開業し、その際に八町駅も営業を開始しました。開業からわずか3年後の1927年（昭和2年）2月13日には、運営会社の名称変更が行われ、越中鉄道の駅として新たな時代を迎えます。

太平洋戦争中の交通網再編の流れの中で、1943年（昭和18年）1月1日には、富山地方鉄道が発足し、越中鉄道を含む地域の交通事業が統合されました。これにより、八町駅は富山地方鉄道射水線の一部となります。戦後も地域の生活を支える存在でしたが、時代の変化と共にその機能も変わっていきました。1969年（昭和44年）4月15日には、かつて重要な役割を担っていた列車交換設備が廃止され、駅の運用形態が縮小されます。その後、正確な時期は不明ながら、駅は無人化されました。そして、1980年（昭和55年）4月1日の射水線全線廃止の日を迎え、八町駅もその歴史に静かに幕を下ろしました。

駅の構造

廃止された時点の八町駅は、単式ホーム1面1線を持つ地上駅でした。このホームは、線路の西側、すなわち新港東口方面へと向かう列車から見て左手に配置されていました。

しかし、かつて八町駅は、列車が行き違うことのできる、より大規模な構造を持っていました。相対式ホーム2面2線を有し、列車交換駅として機能していた時期があったのです。その頃は、西側のホームが下り線用、東側のホームが上り線用として使用されていました。列車交換設備の廃止後、使用されなくなった東側の線路は撤去されましたが、ホームそのものはその後も残存していました。

駅は無人化されていましたが、有人駅として機能していた時期に使われていた駅舎は撤去された後も、ホームの西側には利用者向けの待合所が設けられていました。また、ホームは直線ではなく、少しカーブを描いた形状をしていたことも特徴の一つです。

駅周辺の風景

八町駅が営業していた頃、その周辺には地域の生活を支える施設や主要な道路が位置していました。駅の近くには、現在の国道8号線にあたる富山高岡バイパスが通っており、鉄道の線路はこのバイパスの下をくぐる形で交差していました。また、富山県道205号練合宮尾線も駅周辺を通っており、地域の交通アクセスを担っていました。小規模ながらも、八町簡易郵便局が近隣にあり、地域住民にとって身近な存在でした。

現在の駅跡

射水線の廃止から長い年月が経過し、八町駅のあった場所の様子は大きく変化しました。1997年（平成9年）頃には、かつての線路敷きが大規模な2車線の農道として整備されており、鉄道駅が存在した頃の面影を見つけることは難しくなっていました。さらに時が流れ、2010年（平成22年）頃になると、かつての駅の正確な位置すら特定するのが困難になるほど、周辺の景観は変貌を遂げてしまいました。鉄道が姿を消した後、土地利用が進み、駅の痕跡は失われていったのです。

八町駅は、富山地方鉄道射水線の一部として地域の交通を支えましたが、時代の流れと共にその役目を終えました。現在ではその場所を特定するのも難しいほどに変化していますが、かつて確かにここに鉄道駅があり、人々が行き交っていたという歴史は、静かに語り継がれています。

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