八試水上偵察機

八試水上偵察機について

八試水上偵察機は、大日本帝国海軍によって企画された水上偵察機の一つです。この機体は、大きく分けて中島飛行機、川西航空機、愛知時計電機航空機部（のちの愛知航空機）によって試作されました。その中でも中島機は九五式水上偵察機として正式に採用されましたが、今回は不採用となった川西機（E8K）と愛知機（E8A）に焦点を当てます。

E8K（川西機）の概要

E8Kは、1933年に川西が九〇式二号水上偵察機の代替機として試作を開始しました。設計は技師の関口英二を中心に進められ、同年の1月8日に初飛行が行われました。2月には海軍に引き渡され、性能審査を受けます。

この機体は、木金低翼混合骨組に羽布張りの構造を採用しており、単葉単フロートのデザインを持つ近代的な水上偵察機でした。ある程度の空戦性能を持つことも考慮されており、後の水上戦闘機への発展の先駆けと言えるものでした。しかし、操縦性や離着陸時の安定性に問題があり、性能面でも九〇式二号水上偵察機とほぼ同等であったため、最終的には不採用となりました。この機体は、試作の結果として1機のみが製造されました。

E8A（愛知機）の概要

愛知時計電機航空機部では、1932年から松尾喜四郎技師を中心に独自の水上機設計が進められていました。この時、彼らは複葉単フロートの「AB-7」と、低翼単葉双フロートの「AM-7」の2つの機体を計画しました。特にAM-7は水上戦闘機としての使用も視野に入れることから、高速で上昇性能にも優れると期待されていましたが、諸事情により設計段階で計画は中止されました。

一方、「AB-7」は1933年に2機が製造され、E8Aとして知られるようになりました。この機体も木金混合骨組に羽布張りのデザインを採用しており、前作である九〇式二号水上偵察機二型の発展型と位置付けられていました。ですが、運動性と安定性において中島機に劣っていたため、E8Aも不採用となりました。

まとめ

八試水上偵察機は海軍の要求に応えるため、各社が努力を重ねましたが、結果として不採用となった川西機（E8K）と愛知機（E8A）はそれぞれの特徴と限界を持ち合わせていました。この試作の経験は、後の水上機の設計や運用に影響を与えたことは間違いありません。これらの機体について、特に興味深いのは、採用されなかったとしてもそれぞれに技術的な挑戦がなされていた点であり、今後の航空機開発に向けた貴重な教訓となったことでしょう。

参考文献

• - 野沢正『日本航空機総集 川西・広廠篇』出版協同社、1959年、97,98頁。  
• - 野沢正『日本航空機総集 愛知・空技廠篇』出版協同社、1959年、30,60 - 62頁。

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