九五式水上偵察機

九五式水上偵察機（E8N）

九五式水上偵察機は、昭和10年に日本海軍に制式採用された中島飛行機製の水上偵察機です。この機体は、1933年に昭和8年に開始された開発計画の結果として登場しました。当初、九〇式二号二型水上偵察機（E4N2）の後継機として、近距離用複座水上偵察機の開発が必要とされ、中島飛行機、川西航空機、愛知航空機の3社が競い合う形で製作されました。

開発の背景

中島飛行機は、先代の九〇式二号水上[[偵察機]]の設計を基にしつつ、より優れた空力特性を持つ新しい機体を作り上げることを目指しました。1934年3月に完成した試作機は、従来機に比べて速度や上昇性能、さらには操縦の安定性においても優れていました。また、川西航空機や愛知航空機の試作機との比較審査でも運動性・安定性で際立った結果を残し、1935年9月には正式に九五式水上偵察機として採用されました。

実戦での運用

実戦部隊でもその高い運動性能が評価され、九六式[[艦上戦闘機]]に匹敵する能力を持つとされました。特に支那事変では、偵察任務以外にも哨戒や爆撃、さらには戦闘機代えとしての任務も果たしました。その結果、敵機との空中戦で勝利を収め、これが日本海軍に水上戦闘機の開発を促す要因となりました。

太平洋戦争が始まる頃には、多くの九五式水上偵察機が艦船や陸上基地で使用されており、零式観測機の配備後は主力部隊からは外れましたが、哨戒機や練習機として終戦まで活躍しました。中には特攻隊に配属されたものもあり、九五式水上偵察機はその役割を幅広く果たしました。

生産の詳細

この機体の生産は1940年まで行われ、合計約750機が製造されました。川西航空機によって製造された機体も含まれており、終戦時には50機が残存していたとされています。九五式水上偵察機には、初期型の「九五式一号水上偵察機」（E8N1）と後期型の「九五式二号水上偵察機」（E8N2）が存在しますが、外観や性能に有意な違いはありません。

また、1941年、ナチス・ドイツはこの水上偵察機を巡洋艦「オリオン」に搭載される水上機の代替として1機購入しました。この機体は英国の国籍マークを表示され、特殊なミッションの一環としてマウグ島に引き渡されましたが、残念ながら運用中に失われてしまいました。これは、日本の水上機がドイツにおいて使用された唯一の事例として記録されています。

技術的スペック

九五式水上偵察機の基本的なスペックは以下の通りです：

• - 乗員: 2名
• - 全長: 8.81m
• - 全高: 3.84m
• - 翼幅: 10.98m
• - 空虚重量: 1,370kg
• - 最大[[離陸重量]]: 1,900kg
• - 動力: 中島寿二型改二空冷星型9気筒レシプロエンジン（470kW / 630hp）
• - 最大速度: 299km/h
• - 巡航速度: 198km/h
• - 航続距離: 898km
• - 上昇率: 3,000m / 6分31秒
• - 武装: 7.7mm機銃×2、30kg爆弾×2

このように、九五式水上偵察機はその特性から日本海軍にとって重要な戦力の一翼を担い、実際の戦闘でも多様な役割を果たしました。

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