八試複座戦闘機

八試複座戦闘機（はちしふくざせんとうき）

八試複座戦闘機は1930年代に日本において開発された艦上戦闘機であり、日本海軍の複座機として位置付けられていました。この飛行機は、略称として「八試複戦」をもって知られ、試作された経緯や特徴に注目が集まります。

開発の背景

この機体は1932年（昭和7年）度から始まった海軍機の試製3ヵ年計画の一環で、1933年に三菱航空機および中島飛行機の二社により競争試作として発注されました。この計画は、海軍が要求した「所要航空機種および性能標準」に基づくものであり、その目的は偵察と戦闘を兼ね備えた性能を実現することにありました。海軍はこの時期、主力艦隊の洋上決戦において弾着観測機が不可欠であると認識しており、弾着観測を行うためには空戦性能が不可欠でした。

三菱八試複座戦闘機

三菱によって設計された八試複座戦闘機は、佐野栄太郎技師と中村考之助により開発が進められ、1934年（昭和9年）1月に試作一号機が完成しました。社内での呼称は「カ-8」とされ、金属製の骨組みに羽布張りの複葉構造を持ち、後席からの銃射界を確保するために双垂直平尾翼が採用されていました。

しかし、1934年9月16日に行われた試験飛行中、二号機が急降下からの引き起こしの際に空中分解を起こして墜落しました。このため、試験は中止となり、最終的には不採用となりました。

中島八試複座戦闘機

一方、中島飛行機も明川清技師を設計者に迎え、八試複座戦闘機の開発を進めました。1934年3月には試作機1機が完成し、社内名称は「NAF-2」となりました。設計は以前に不採用となった六試艦上複座戦闘機（NAF-1）の流れを受け継いだもので、構造は金属製の骨組みに羽布張りの複葉機体でした。

中島の機体は艦上戦闘機としても運用可能なように主翼に折りたたみ機構が備えられており、下翼に逆ガル翼を採用していました。性能面での不足はなかったものの、海軍が複座戦闘機の導入を見送ったため、こちらも不採用となりました。

結論

八試複座戦闘機は、当時の技術向上を反映したものであり、海軍の求める航空機の基準を満たそうとした努力が見受けられます。しかし、最終的に不採用となった背景には、戦略の変更と技術的な要求が影響していると言えます。これに伴い、観測機については水上機への移行が進められ、次の十試水上観測機が発注される方向へと変化していきました。今回の八試複座戦闘機の歴史は、日本の航空機工業史において重要な一ページを形成しています。

参考文献

• - 野沢正 『日本航空機総集 三菱篇』 出版協同社、1961年、144 - 146頁。全国書誌番号:53009883。
• - 野沢正 『日本航空機総集 中島篇』 出版協同社、1963年、179・180頁。全国書誌番号:83032194。

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