八雲町都市間高速バス正面衝突事故

2023年6月18日午前11時55分頃、北海道八雲町野田生の国道5号線で、都市間高速バスと家畜運搬車が正面衝突する重大事故が発生しました。この事故により、都市間高速バスの乗客と両車両の運転手を含む5名が死亡、12名が重軽傷を負うという悲惨な結果となりました。

事故の概要

事故が発生したのは、緩やかな左カーブがある片側1車線の道路でした。都市間高速バスは、札幌から函館へ向かう途中で、乗客15人を乗せていました。一方、家畜運搬車は、森町の事務所から八雲町の加工場へ向かう途中でした。家畜運搬車は、積載していた30頭の豚と共に、カーブを曲がりきれずに対向車線へはみ出し、都市間高速バスに正面衝突しました。事故当時、路面は乾燥しており、視界も良好でした。

衝突の衝撃は非常に大きく、バスの運転手（64歳）、家畜運搬車の運転手（65歳）、そしてバスの乗客3名（33歳男性、57歳女性、55歳女性）が亡くなりました。また、重傷者1名、軽傷者11名が出ました。バスの運転手は15年のベテランで、過去に重大事故を起こしたことはありませんでした。また、家畜運搬車の運転手も30年のベテランでした。

事故当時、バスに乗車していた乗客のうち、亡くなった3名は運転席側の前方3列に座っていました。また、投げ出された豚のうち、12頭が死亡、17頭が生存しました。

事故現場は、過去にも居眠り運転や追い越しによる事故が多発しており、10年前に国土交通省北海道開発局により事故危険区間に指定されていました。しかし、中央分離帯などの正面衝突対策は実施されていませんでした。

事故原因

事故の原因は、家畜運搬車がセンターラインを越えて対向車線に侵入したことによるものでした。現場にブレーキ痕がないことや、事故現場までの道路がほぼ直線であったことから、当初は運転手の人的ミスが原因と考えられました。しかし、その後の調査で、運転手が事故当時心筋梗塞を発症していた可能性が浮上しました。さらに、事故前日には体調不良を訴え、風邪薬を服用していたことも判明しました。

交通事故鑑定人は、「単調な運転による運転手の意識低下が原因である可能性が高い」と分析しました。また、事故現場にはガードロープがあり、路外への逸脱を防ぐ構造となっていたため、「防ぎようのない事故だった」と指摘しました。

事故後の動き

事故後、警察は自動車運転死傷処罰法違反（過失運転致死傷）の疑いで家畜運搬車の会社を家宅捜索しました。また、国土交通省や北海道庁、トラック協会、バス協会などが参加する緊急対策会議が開かれ、正面衝突事故の抑制策や安全運転教育の強化が議論されました。

事故で亡くなった乗客の遺族は、民法の使用者責任に基づき、家畜運搬車の会社に損害賠償を求める訴訟を起こしました。さらに、道警は、家畜運搬車の会社幹部と安全運転管理者を業務上過失致死傷の疑いで書類送検しました。

事故の教訓

この事故は、長距離運転におけるドライバーの健康管理や、単調な運転による意識低下が重大な事故につながる可能性を示唆しました。また、事故危険区間における安全対策の重要性も改めて浮き彫りになりました。今後は、二度とこのような悲惨な事故を起こさないために、関係機関が連携し、より一層の安全対策を講じる必要があります。

今回の事故は、道路交通の安全に対する意識を改めて問い直す契機となりました。運転者は、常に体調に留意し、安全運転を心がけることが重要です。また、企業は従業員の健康管理を徹底し、安全運転に関する教育を継続的に行うことが求められます。そして、行政は、事故多発地点の安全対策を徹底し、より安全な道路環境整備を進める必要性を示唆しました。

この事故で亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

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