八面体 (アルバム)

マーズ・ヴォルタ、新たな境地を開拓した5作目『八面体』

2009年、アメリカ合衆国のロックバンド、マーズ・ヴォルタが発表した5作目のスタジオアルバム『八面体』(Octahedron)は、バンドの転換期を象徴する作品として知られています。メンバーの脱退を経て、ジョン・フルシアンテを含む7名という異例の編成で制作された本作は、従来のスタイルを踏襲しつつ、新たな音楽性を模索した意欲作と言えるでしょう。

制作背景：変化と挑戦

バンドの中心人物であるオマー・ロドリゲス・ロペスは、本作の制作過程で、これまでの複雑で長いインストゥルメンタル楽曲からの脱却を試みました。楽曲制作においては、最初のアイデアを出来る限り大切に、シンプルな発想を重視したと語っています。また、ボーカリストのセドリック・ビクスラー・ザヴァラは、リリースに先駆けて「よりメロウな作品」になることを示唆しており、従来のヘヴィなサウンドから変化が見られることを予感させていました。

これまでのアルバムとは異なり、アメリカでの発売元がワーナー・ブラザース・レコード、ヨーロッパではマーキュリー・レコードへと変更された点も、バンドを取り巻く環境の変化を反映していると言えるでしょう。日本盤は従来通りユニバーサルミュージックから発売されています。

商業的成功と音楽的評価：高い評価にもかかわらず商業的成功は限定的

しかしながら、『八面体』は、前作までの商業的な成功を完全に再現するには至りませんでした。アメリカBillboard 200チャートでは12位と、バンドにとって初めてトップ10入りを逃す結果に終わっています。オーストラリアやイギリスのアルバムチャートでも、前作までトップ10入りを果たしていたものの、本作はそれぞれ41位、64位と低迷しました。

それでも、音楽評論家からは高い評価を受けています。著名な音楽評論家であるジョン・ブッシュは、オールミュージックにおいて本作を絶賛。アコースティックやバラードに限定された作品ではなく、激しいロックナンバーも収録されているとしながらも、マーズ・ヴォルタが新たな方向性を示したと評しています。ジ・エッジやピンク・フロイドといったアーティストを引き合いに出し、バンドの芸術性を高く評価しました。同評論家は、ダイナミックな極端さを追求する必要がないことを本作が証明したと結論づけています。

楽曲構成と参加ミュージシャン

アルバムには、オマー・ロドリゲス・ロペスとセドリック・ビクスラー・ザヴァラが共同で作曲した全9曲が収録されています。代表的な楽曲としては、「Since We've Been Wrong」、「Teflon」、「Halo of Nembutals」、「With Twilight as My Guide」、「Cotopaxi」、「Desperate Graves」、「Copernicus」、「Luciforms」などが挙げられます。

演奏メンバーは、ギター、シンセサイザー'>[オマー・ロドリゲス・ロペス]、セドリック・ビクスラー・ザヴァラ(ボーカル)、アイザイア・アイキー・オーウェンズ(キーボード)、ホアン・アルデレッテ(ベース)、トーマス・プリジェン(ドラム)、マルセル・ロドリゲス・ロペス(ギター'>[パーカッション]])、[[ジョン・フルシアンテ]に加え、Mark Aanderud(ピアノ)が参加しています。

まとめ：進化と挑戦の記録

『八面体』は、商業的な成功という点では前作に及ばなかったものの、音楽的な挑戦と進化を遂げたマーズ・ヴォルタの重要な作品です。新たなメンバーを迎えたバンドは、従来のサウンドから一歩踏み出し、より洗練された、そして多様な音楽性を提示しました。音楽評論家からの高い評価からも、その芸術性と革新性が認められていると言えるでしょう。このアルバムは、マーズ・ヴォルタのキャリアにおける一つの転換点として、彼らの音楽史に深く刻まれています。

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