八風峠

八風峠

八風峠は、滋賀県東近江市黄和田町と三重県三重郡菰野町を結ぶ八風街道の途中に位置する標高940mの峠です。この峠越えは、八風越えや田光越えとも呼ばれています。

歴史

連歌師である宗長の『宗長日記』や、山科言継の『言継卿記』には、八風峠の険しさが記されています。『吾妻鏡』には、1204年（元久元年）4月に平氏の残党が蜂起し、伊勢・伊賀両国を占領して八峯山、すなわち八風峠を抑えた三日平氏の乱についての記述があり、鈴鹿峠と同様に重要な交通路であったことがわかります。

八風という名称は、『伊勢風土記』に由来するとされています。

八風の由来

天日別命（あめのひわけのみこと）が、神武天皇の命を受けて大和国から伊勢国へ攻め入った際、国津神（くにつかみ）である伊勢津彦に「この国を天孫に献上せよ」と命じました。しかし、伊勢津彦は「私はこの国を治めて久しいので、命令には従わない」と答えました。これに対し、天日別命は「戦を起こして汝を殺す」と告げました。伊勢津彦は恐れて、「私の国はすべて天孫に献上し、私は今夜八風を起こし、海の水を吹き波に乗って東へ去ろう」と言ったとされています。

伝承

八風峠を陶器などを持って通行すると、必ず天候が荒れ、洪水が起こるという伝承があります。自然の力に対する畏敬の念が込められた話として語り継がれています。

伊左衛門と嘉助の碑

江戸時代の文化年間(1804年～1818年)に、近江国の商家に奉公に出ていた伊左衛門と嘉助という二人の若者がいました。彼らは元服式に出席するため、故郷である伊勢国朝明郡田光村（現在の三重県三重郡菰野町田光）へ帰る途中、八風峠を越えました。しかし、実家まであと一里ほどの場所で大雪に遭遇し、峠道で遭難死してしまいました。家族はそのことを深く悲しみ、二人が倒れていた場所にそれぞれ伊左衛門の碑と嘉助の碑を建てました。これらの碑は現在も残されており、訪れる人々に悲しい物語を伝えています。

まとめ

八風峠は、歴史的な背景と自然の厳しさを伝える峠です。峠を訪れる際には、いにしえの人々の暮らしや、自然に対する畏敬の念を感じてみてはいかがでしょうか。

関連項目

* 日本の峠一覧

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