山科言継

山科言継（やましな ときつぐ）

山科言継は、戦国時代の日本において重要な役割を果たした公卿であり、山科言綱の子です。彼は官位として正二位・権大納言にまで昇進し、また贈従一位の称号も受けました。言継は現存する『歴名土代』の編纂者としても知られ、多くの戦国大名との交流を持っていたことが特徴です。

生涯と業績

山科家は藤原北家四条家の一分家であり、羽林家の家格を持っていました。しかし、戦国期には他の公家と同様、危機的な状況に直面していました。天文17年（1548年）には、室町幕府によって山科荘が不正に横領されるという事態が発生しました。このような苦しい状況にもかかわらず、言継は家業に取り組むだけでなく、多方面にわたる才能を発揮しました。彼は有職故実や笙、製薬の技術を身に付け、和歌や蹴鞠などの文化活動への関心を持っていました。しかし、彼の最大の特技は「人脈作り」であり、これが彼の成功の鍵となりました。

言継は父の正室ではない女性から生まれた子であり、そのため後継ぎとして期待されることになりました。彼は阿末の社会に育った経験から、庶務や朝廷の運営に対する関心を深めたと言われています。言継は内蔵頭として、朝廷の財政の建て直しに努めました。特に、当時の朝廷財政は、数多くの大名からの献金に依存しており、言継は各地を駆け回ってこれらの資金を確保する役割を担いました。

言継は、1533年には尾張国の織田信秀を訪問し、和歌や蹴鞠を教え、この交流を通じて後の献金獲得へとつなげました。また、彼は弘治2年（1556年）には今川義元親子からの献金を取り付けるために駿河国に出向くなど、多岐にわたる活動を展開しました。

医業と日常生活

言継は医業も手掛けており、庶民からの診療依頼に応じて内服薬や外用薬を調合していました。彼は薬種屋からさまざまな薬材を購入し、診療にも尽力していました。しかし、天文22年（1553年）に彼の子どもが食中毒にかかった際には、専門の医師に依頼するなど、医療知識が必ずしも深くはなかったことが示されています。

言継は政治的な役割に加えて、医療の側面でも地域住民に貢献していました。晩年には権大納言に昇進し、織田信長との交渉でも重要な役割を果たしました。信長が山科邸を訪れた際には、その交渉の成功が期待されていました。

著作と影響

著名な著作としては、自らの歌集『言継卿集』や、長期にわたって記録された日記『言継卿記』があります。特に『言継卿記』は、当時の公家や戦国武将の動向が詳細に記されており、当時の社会状況を理解する上での重要な資料とされています。この日記は日本の文献の中で最古の診療録とも言われており、言継自身の医療行為に関する記録も含まれています。

その死後には、朝廷の存続に寄与した業績が評価され、従一位という名誉の称号が贈られました。これにより、言継の政治的・文化的な影響が継承されることとなりました。彼に関する研究は今日に至るまで多く行われ、戦国時代の公家社会を理解するための重要な資料となっています。

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