公事

公事（くじ）

日本史において「公事」という言葉は、政務、賦課、訴訟の三つの主要な側面を持つ重要な概念を指します。歴史的な背景を踏まえながら、その内容を詳しく見ていきましょう。

政務としての公事

公事は元々、朝廷での政務一般を意味しました。中国から導入された律令制度の下で用いられたこの言葉は、『周礼』にも「公事不私議」という文があるように、公共の事柄を私的な意思に基づいて議論することを否定する意義を持っていました。特に国司は、租税徴収や財政状況を記録するために公事を運営し、平安時代中頃以降は朝廷の年間行事や儀式が大きなウェイトを占めるようになりました。これらの行事は天皇や公卿によって運営され、法令や儀式書に基づいて実施されていました。

しかし、鎌倉時代以降、朝廷の実権が衰退していく中で、公事の形態も変化し、多くは簡略化され、廃止されるものすら現れました。室町時代になっても、公事に関連する文献の作成が行われ、当時の権威の回復を目指す動きがありましたが、応仁の乱以降は公事そのものが名目化していきました。

賦課としての公事

中世においては、年貢や所当、官物以外のすべての税を「公事」と総称し、平安中期から存在していた臨時の賦課が起源です。荘園制度の確立と共に、さまざまな形で課税されるようになり、特定の賦課をめぐる法律も確立されました。

公事はさまざまな分類方法があり、賦課を行う主体や負担する対象によっても分けられます。具体的には、農民に課される賦課から、荘園領主や武士に至るまで、多岐にわたる役割が存在しました。多くの雑公事は特産物やその加工品で納められ、後に金銭での負担が一般化しました。さらに、政務としての行事を維持するために、受領が民衆に新たに負担を求める場面も見られ、国衙の運営情況により公事の課税は変動し続けました。

訴訟としての公事

戦国時代以降、裁判に関する公事が見受けられ、特に公儀が行う裁判を指して「公事」と呼ぶようになりました。この時期の公事は、民事と刑事に分かれ、江戸時代にはこれらの手続きがさらに発展しました。訴訟は基本的に内済による解決が望まれ、民衆自身が賠償を求める訴えを起こすことは困難でした。訴訟を支える公事宿や公事師といった存在も広まり、それに伴う問題も浮上しました。

特に江戸時代では、民事[[訴訟]]が「公事出入」と呼ばれ、複雑な訴訟手続きと共に民衆の権利意識を形作る一因ともなりました。しかし、訴訟は内部解決を重んじる傾向があり、外部からの介入を最小限とし、政府による介入と矛盾する場面もありました。

まとめ

以上のように「公事」は、政務、賦課、訴訟という三つの側面から日本の歴史や社会構造に深く関与してきました。それぞれの側面が時代の変遷と共に変化しながらも、当時の人々の生活や行事、義務感を形成する上で重要な役割を担っていたことがわかります。

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