官物

官物（かんもつ）について

官物は、日本の律令制に基づいて皇室や統治機関に納入される一連の物資のことを指します。この用語は特に、租庸調という税制の下で徴収される品々に関連付けられており、時には「租」のみを限定する場合もあります。律令制の崩壊後、特に平安時代中期からは、主要には公領からの貢納物を指すようになりました。和訓では「おほやけもの」と呼ばれています。

官物の発展

官物は本来、地税としての田租を指すと考えられていますが、律令制の崩壊以降、多様な貢納物やその集積物を含むようになりました。具体的には、年料舂米、年料租舂米、年料別納租穀、年料別貢雑物、年料雑器、交易雑物などが官物の代表的な形態として挙げられます。

官物の徴収システムは、租庸調制度の崩壊によって変化し、人頭税としての庸と調は徴収されなくなりました。その代わり、田租や地子米に根ざした地税的な官物が主体となり、残存していた人頭税の名残を含む雑役も徐々に地税化していきました。これは、時代の流れとともに制度が変化し、より効率的な納税方法が求められた結果です。

しかしながら、10世紀の段階では、依然として官物の徴収基準は各令制国の国例によって規定されていました。具体的には、官稲や官米、絹、布などの物品の形で徴収されていましたが、実際の徴収量はそれぞれの国司の裁量によって増減することがありました。このように、国例に基づく賦課を超過して徴収される官物を「官物加徴」と呼び、この過程で得られた米を「加徴米」と名付けました。この加徴を巡る対立は、国司と地元の農民との間で激化し、11世紀中期には官物や雑物が一定の基準に従って徴収されるようになりました。一方、臨時の賦課は臨時雑物として区分されました。

公租の導入と官物の変化

12世紀に入ると、既存の官物率法は見直され、公田における納付だけではなく、荘園に対する納税義務も新たに設定されることとなりました。この結果、一国平均役や御家人役といった形式で公租が導入され、こうした新たな貢納物にも官物という名称が用いられるようになりました。そして、この呼称は南北朝時代にも引き続き使用されました。

このように、官物は日本の古代から中世にかけての税制や経済システムの変遷を反映した重要な概念であり、時代ごとにその定義や徴収方法は大きく変動しました。

もう一度検索