公物
公物（こうぶつ）とは、国や地方公共団体といった行政主体が、特定の有体物を直接に公共の目的のために供している状態を指します。これは私物に対する概念であり、たとえ国や地方公共団体が所有する財産であっても、単に収益を得ることを目的とする普通財産は公物には含まれません。
興味深い点として、私有財産であっても、それが公共の目的に供されるならば公物としての性質を持ち得ます。私有財産が公物として利用される場合、公共の目的を達成するために必要な範囲で所有者の私権が制限されることがあり、これには正当な補償が行われるべきですが、場合によっては、その物に関する私権そのものが認められないこともあります（道路法第3条参照）。
公物は、国家賠償法第2条で定められる「営造物」とほぼ同義であると考えられています。その用途によって、直接一般公衆の利用に開放される「公共用物」（例：公道、河川、公園、港湾）と、国や地方公共団体自身が内部的な目的のために使用する「公用物」（例：官公署や公立学校の建物・敷地）に分けられます。
公物が成立するためには、特定の物件が公共の利用に適した形態を備え、かつ行政主体による「公用開始行為」が必要です。ただし、自然の状態ですでに公共の用に供しうる実体を備えている「自然公物」（例：河川）の場合は、特に公用開始行為は不要とされます。一方、人の手を加えて初めて公物となる「人工公物」（例：公道、公園）には公用開始行為が必須です。公物は、その形態を欠くに至るか、または行政主体による「公用廃止行為」によってその性質を失います。
公用開始行為は、それを実行する行政主体に一定の権限があることが前提となります。何ら権限を持たない者が他人の物を勝手に公用物とする行為は、原則として無効です。また、公物として維持すべき理由がなくなった場合、たとえ明示的な公用廃止行為がなくても、状況から黙示的に公用が廃止されたとみなされ、時効による権利取得が認められることがあります。
公物の管理に不備（瑕疵）があり、それが原因で損害が発生した場合、被害者は損害賠償を請求できます。この請求は、公物の管理を担当した公務員に過失がなかったとしても可能ですが、請求の相手は公務員個人ではなく、公物の管理者である国や地方公共団体となります。
不動産登記に関しては、公物の中には不動産登記法の適用が一部除外されるものがありますが、所有権の移転については民法第177条が適用されます。したがって、国などが未登記の公物を所有している場合、後から登記を備えた第三者に対してその所有権を対抗できない可能性があります。しかし、判例では、このような不動産が私有公物として公共の用に供されている限り、第三者は損害賠償請求や妨害排除請求を行うことはできないとしています。公用廃止行為が行われない限り、公物であることによって所有権に加えられた制限は継続されます。
公物はその利用目的、成立過程、所有権の帰属など、様々な観点から分類されます。
利用目的による分類
公共用物：直接一般公衆が利用するもの（公道、河川、公園、港湾など）
公用物：国や地方公共団体自身が利用するもの（官公署、公立学校の建物や敷地など）
成立過程による分類
自然公物：自然状態で公共の用に供しうる実体を持つもの（河川など）
人工公物：公用開始行為によって初めて公物となるもの（公道、公園、港湾など）
所有権の帰属による分類
国有公物、公有公物、私有公物
管理権と所有権の帰属による分類
自有公物、他有公物
公物の法的性質の一つに「不融通性」があります。これは、公物がその公共目的のために特別に扱われることを意味し、その制限の様態は多様です。通説では、国有公物に対して強制執行はできないとされますが、公有または私有の公物に対しては強制執行が可能です。しかし、仮に差し押さえられ競売で落札されたとしても、公用廃止行為がなされない限り、その物に対する私権には制限が加えられ続けます。ただし、黙示的にでも公用廃止が行われた場合は、時効による権利取得の制限は受けません。また、公物を他の目的に転用したり収用したりする場合、公物の状態のままでは対象とならず、一度公用廃止行為を行ってからでなければなりません。
公物の範囲を決定するにあたり、特別な定めがない限り、行政庁が一方的にその範囲を定めることは原則として許されず、この決定に対して不服がある者が不服申立てや訴訟を提起することはできないとされています。
公物の管理や使用に関しては、一般法とは異なる特別な規定が多いのが特徴です。使用関係としては、誰でも自由に利用できる「一般使用」のほか、特定の者が許可を得て利用する「許可使用」、特定の者に排他的な利用権を与える「特許使用」（例：道路上の電柱設置）などがあります。
かつて「法定外公共物」と呼ばれたものがあります。これは、歴史的に国の所有であった公物ですが、直接の根拠法がなく、地方公共団体が管理していました。地方分権一括法の施行に伴い、これらの所有権は国から市町村へと移譲されました（国有財産法・国有財産特別措置法の一部改正による）。
「公物法」は、公物に関する法規範全体を指す学問上の概念です。関連する主要な法規には、河川法、道路法、港湾法、国有財産法などがあります。
公物に関する判例も多く存在します。例えば、河川の利用権について、「河川の全水量を独占的に使用できる権利ではなく、使用目的を満たすために必要な限度での流水使用権に過ぎない」としたもの、村道に対する村民の自由な使用権を認めたもの、行政財産の目的外使用許可が取り消された場合の補償請求の可否を示したもの、郵便局庁舎への広告物掲示許可が特定の権利設定ではないとしたものなどがあり、公物の法的扱いに関する理解を深める上で重要です。
興味深い点として、私有財産であっても、それが公共の目的に供されるならば公物としての性質を持ち得ます。私有財産が公物として利用される場合、公共の目的を達成するために必要な範囲で所有者の私権が制限されることがあり、これには正当な補償が行われるべきですが、場合によっては、その物に関する私権そのものが認められないこともあります（道路法第3条参照）。
公物は、国家賠償法第2条で定められる「営造物」とほぼ同義であると考えられています。その用途によって、直接一般公衆の利用に開放される「公共用物」（例：公道、河川、公園、港湾）と、国や地方公共団体自身が内部的な目的のために使用する「公用物」（例：官公署や公立学校の建物・敷地）に分けられます。
公物が成立するためには、特定の物件が公共の利用に適した形態を備え、かつ行政主体による「公用開始行為」が必要です。ただし、自然の状態ですでに公共の用に供しうる実体を備えている「自然公物」（例：河川）の場合は、特に公用開始行為は不要とされます。一方、人の手を加えて初めて公物となる「人工公物」（例：公道、公園）には公用開始行為が必須です。公物は、その形態を欠くに至るか、または行政主体による「公用廃止行為」によってその性質を失います。
公用開始行為は、それを実行する行政主体に一定の権限があることが前提となります。何ら権限を持たない者が他人の物を勝手に公用物とする行為は、原則として無効です。また、公物として維持すべき理由がなくなった場合、たとえ明示的な公用廃止行為がなくても、状況から黙示的に公用が廃止されたとみなされ、時効による権利取得が認められることがあります。
公物の管理に不備（瑕疵）があり、それが原因で損害が発生した場合、被害者は損害賠償を請求できます。この請求は、公物の管理を担当した公務員に過失がなかったとしても可能ですが、請求の相手は公務員個人ではなく、公物の管理者である国や地方公共団体となります。
不動産登記に関しては、公物の中には不動産登記法の適用が一部除外されるものがありますが、所有権の移転については民法第177条が適用されます。したがって、国などが未登記の公物を所有している場合、後から登記を備えた第三者に対してその所有権を対抗できない可能性があります。しかし、判例では、このような不動産が私有公物として公共の用に供されている限り、第三者は損害賠償請求や妨害排除請求を行うことはできないとしています。公用廃止行為が行われない限り、公物であることによって所有権に加えられた制限は継続されます。
公物はその利用目的、成立過程、所有権の帰属など、様々な観点から分類されます。
利用目的による分類
公共用物：直接一般公衆が利用するもの（公道、河川、公園、港湾など）
公用物：国や地方公共団体自身が利用するもの（官公署、公立学校の建物や敷地など）
成立過程による分類
自然公物：自然状態で公共の用に供しうる実体を持つもの（河川など）
人工公物：公用開始行為によって初めて公物となるもの（公道、公園、港湾など）
所有権の帰属による分類
国有公物、公有公物、私有公物
管理権と所有権の帰属による分類
自有公物、他有公物
公物の法的性質の一つに「不融通性」があります。これは、公物がその公共目的のために特別に扱われることを意味し、その制限の様態は多様です。通説では、国有公物に対して強制執行はできないとされますが、公有または私有の公物に対しては強制執行が可能です。しかし、仮に差し押さえられ競売で落札されたとしても、公用廃止行為がなされない限り、その物に対する私権には制限が加えられ続けます。ただし、黙示的にでも公用廃止が行われた場合は、時効による権利取得の制限は受けません。また、公物を他の目的に転用したり収用したりする場合、公物の状態のままでは対象とならず、一度公用廃止行為を行ってからでなければなりません。
公物の範囲を決定するにあたり、特別な定めがない限り、行政庁が一方的にその範囲を定めることは原則として許されず、この決定に対して不服がある者が不服申立てや訴訟を提起することはできないとされています。
公物の管理や使用に関しては、一般法とは異なる特別な規定が多いのが特徴です。使用関係としては、誰でも自由に利用できる「一般使用」のほか、特定の者が許可を得て利用する「許可使用」、特定の者に排他的な利用権を与える「特許使用」（例：道路上の電柱設置）などがあります。
かつて「法定外公共物」と呼ばれたものがあります。これは、歴史的に国の所有であった公物ですが、直接の根拠法がなく、地方公共団体が管理していました。地方分権一括法の施行に伴い、これらの所有権は国から市町村へと移譲されました（国有財産法・国有財産特別措置法の一部改正による）。
「公物法」は、公物に関する法規範全体を指す学問上の概念です。関連する主要な法規には、河川法、道路法、港湾法、国有財産法などがあります。
公物に関する判例も多く存在します。例えば、河川の利用権について、「河川の全水量を独占的に使用できる権利ではなく、使用目的を満たすために必要な限度での流水使用権に過ぎない」としたもの、村道に対する村民の自由な使用権を認めたもの、行政財産の目的外使用許可が取り消された場合の補償請求の可否を示したもの、郵便局庁舎への広告物掲示許可が特定の権利設定ではないとしたものなどがあり、公物の法的扱いに関する理解を深める上で重要です。
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