法定外公共物

法定外公共物とは

法定外公共物とは、道路法、河川法、下水道法、海岸法などの法令の適用を受けない公共物のことを指します。具体的には、里道、普通河川、水路、ため池や、それらに付随する堤塘などが該当します。これらの公共物は、登記上私権が設定されておらず、公図上には地番が付されていないことが一般的です。

ただし、法定の漁港区域や港湾区域内にある里道・水路などは、それぞれの法律に基づいて維持管理されるため、法定外公共物には含まれません。また、海浜地も、海岸法の改正により一般公共海岸区域として都道府県が管理することになったため、法定外公共物ではなくなっています。

歴史的背景と管理

明治時代、法定外公共物は地租が課されない国有地として分類され、大蔵省（現在の財務省）が管理を行っていました。しかし、その数の多さや場所の特定が困難なことから、実質的には地域の実態に任されていたのが現状です。これにより、様々な問題が発生するケースも見られました。

2000年に施行された地方分権一括法に基づき、里道・水路などの機能を持つ法定外公共物は、2005年3月までに地元自治体（市町村）へ無償譲渡されました。それ以外の機能が失われたものについては、2005年4月以降、国（財務局・財務事務所）が管理・売払いを行っています。

赤線・青線とは

法定外公共物の中でも、特に重要なのが「赤線」と「青線」です。

赤線（赤道・里道）： 道路法が適用されない法定外公共物の道路を指します。公図に赤い線で表示されていたことから、このように呼ばれています。
青線（青道）： 河川法などの法令で管理されない普通河川、水路、ため池などを指します。公図に青い線で表示されていたことから、このように呼ばれています。

青線には、公の管理に服さない用悪水路や灌漑用水路も含まれます。地籍調査が進んでいない地域では、土地の境界が曖昧なため、周辺の地権者による転用が進んでいるケースもあります。災害発生時には、責任の所在が不明確になることが問題点として挙げられます。

堤塘敷、土揚敷

水路やため池などの堤防敷地は、堤塘敷や土揚敷と呼ばれます。公図上では茶色や薄墨色で着色され、地番は付されていません。

取得時効との関係

法定外公共物などの行政財産は、私権の設定が認められておらず、原則として取得時効は成立しないとされています。しかし、判例では、以下の条件を満たす場合に、法定外公共物（水路）の時効取得を認めています。

公共用財産が長期間、事実上公共の目的で使用されず、その機能や形態を失っている場合
他人が平穏かつ公然と占有を継続し、それによって公共の目的が害されず、公共用財産として維持すべき理由がない場合

これらの条件を満たす場合には、公共用財産は黙示的に公用が廃止されたとみなされ、取得時効が成立します。ただし、通説および国側の主張では、自主占有を開始した時点で、すでに上記の条件を満たしている必要があるとされています。

その他の関連事項

白地： 公図上、地番がない国有地を指します。都市計画法上の未確定地域や市街化調整区域も白地と呼ばれることがあります。
二線引畦畔： 田畑の間に存在する畦道や土手を指します。公図上、実線で囲まれた部分が相当し、国有地です。里道とは異なり、水田の維持機能も有しています。

法定外公共物は、その定義や管理が複雑であり、様々な法律や判例が関わっています。土地の権利関係を理解する上で、重要な知識と言えるでしょう。

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