公立志津川病院

公立志津川病院の歴史

公立志津川病院は、宮城県本吉郡南三陸町に存在した町立病院です。その前身は、1880年に開設された「宮城病院気仙沼分局志津川出張所」に遡ります。その後、「公立志津川病院」と改称され、地域医療の中核を担ってきました。

設立から総合病院へ

1953年には1町3カ村国保直営組合病院として新築され、1975年には鉄筋4階建の建物に改築。1984年には増築工事が完了し、総合病院としての機能を拡充しました。1990年には人工透析センターも完成し、地域医療の発展に貢献しました。

医療体制の変化と課題

1990年代以降、医療費抑制の方針や医師不足の影響を受け、産婦人科や泌尿器科が閉鎖されるなど、医療体制の縮小を余儀なくされました。2001年には医師数が法定数を大幅に下回る状況となり、宮城県議会でも問題視されました。2005年には、志津川町と歌津町の合併により南三陸町が誕生し、病院も町立として再スタートを切りました。

東日本大震災による甚大な被害

2011年3月11日、東日本大震災が発生。公立志津川病院は、津波により4階部分まで浸水する甚大な被害を受けました。屋上に避難誘導中のスタッフや、避難しきれなかった入院患者が津波に巻き込まれ、多くの犠牲者を出しました。また、病院に取り残された人々も、救助までの間、低体温症などで命を落としました。

この未曾有の災害の中、菅野武医師をはじめとする医療スタッフは、救助が来るまでの間、懸命に医療活動を続けました。その功績が評価され、菅野医師は米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出されました。

震災後の医療活動と復興

震災直後、イスラエル軍の災害派遣医療チームが「イスラエル医療センター」を開設し、医療活動を展開しました。その後、同施設を流用し、公立志津川病院仮設診療所が開設され、地域医療の再建が図られました。また、登米市に臨時の「公立志津川病院」が開設され、入院医療も再開されました。

南三陸病院への移転と閉院

2015年12月14日、公立志津川病院の後継となる町立南三陸病院が開院し、入院患者を含め全ての機能が移転しました。これにより、公立志津川病院は長い歴史に幕を閉じました。

年表

1880年5月：「宮城病院気仙沼分局志津川出張所」が設置
1882年：「公立志津川病院」に改称
1906年10月：志津川町が病院を買収し町有化
1926年1月：「町立志津川病院」が開院
1949年4月：「公立志津川病院」に名称復帰
1953年9月：病院が新築
1975年3月：鉄筋4階建に改築
1984年11月：「公立志津川総合病院」に改称
1990年3月：人工透析センターが竣工
2005年10月1日：南三陸町発足に伴い、町立「公立志津川病院」となる。
2011年3月11日：東日本大震災で被災
2015年12月14日：南三陸病院開院に伴い閉鎖

東日本大震災について

公立志津川病院は、東日本大震災において甚大な被害を受けました。かつてのチリ地震の教訓から、津波対策として病室を高層階に設置するなど対策を講じていましたが、想定をはるかに超える津波によって、多くの人命が失われました。

アクセス

JR気仙沼線 志津川駅から徒歩約5分
三陸沿岸道路 桃生津山ICから車で約30分
* 三陸沿岸道路 登米東和ICから車で約30分

まとめ

公立志津川病院は、地域の医療を長年にわたり支えてきた重要な拠点でした。東日本大震災という未曾有の災害に見舞われましたが、その歴史は、人々の命と健康を守るために尽力した医療従事者たちの献身と、地域の人々の記憶の中に深く刻まれています。

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