公開企業会計監視委員会

公開企業会計監視委員会（PCAOB）について

公開企業会計監視委員会、略称PCAOB（Public Company Accounting Oversight Board）は、2002年にアメリカ合衆国に設立された非営利法人で、主に上場企業に対する監査の監督を行っています。その背景には、会計の透明性を向上させ、投資家の利益を保護するという重要な使命があります。PCAOBは、アメリカ証券取引委員会（SEC）の承認の下、独立した組織として機能し、監査報告書の信頼性を高めるために様々な基準や規則を設定し、監査事務所を監視しています。

PCAOBの設立背景

PCAOBは、1990年代から続いたアメリカの大規模上場企業による会計スキャンダルや倒産事件、多くの投資家に悪影響を及ぼした出来事を契機に設立されました。特に、エンロンやワールドコムの倒産事件は、会計監査の信頼性が揺らいだことを象徴的に示しています。これを受けて、SOX法（サーベンス・オクスリー法）が制定され、監査人はPCAOBによる監督下に置かれることが義務付けられました。

PCAOBの組織と運営

PCAOBは、SECによって任命された5人の理事会委員から構成されており、その中には公認会計士が含まれています。理事会は独立性が求められ、他の企業活動には従事できません。また、PCAOBの運営資金は監査事務所からの手数料収入によって賄われています。

現在の理事会の議長はウィリアム D. ドゥーンケ3世であり、これまでの歴代議長の中には、設立時の初代議長ウィリアム・H・ウェブスターも含まれますが、彼は短期間で辞任するという不祥事に見舞われました。

PCAOBの権限と機能

PCAOBは、監査業務に関する登録・検査・基準設定・施行を行う権限を持っています。具体的には、登録監査事務所に対し、定期的に監査検査を実施し、報告書を発行することが求められています。また、監査事務所の品質管理や倫理基準の設定、違反があった場合の調査や懲戒を行うことができます。

特に、監査業務の独立性を保つために、公開企業に対する監査人のコンサルティング業務を禁止する一方で、税務サービスには一定の例外を設けています。これは、過去の会計スキャンダルの背景として、監査人がクライアント企業からの高額な報酬を得ていたことが独立性の欠如を招いたためです。

検査報告書と不祥事

PCAOBは、各監査事務所の検査結果を公表し、投資家にとっての透明性向上を図っています。報告書は大部分が公開されますが、監査事務所が品質問題に取り組んでいる間は、特定の問題に関する情報が公開されないこともあります。

近年では、KPMGが監査調書の改竄や不正行為を行っていた問題が発覚し、SECから制裁金を課せられたことが記憶に新しいです。この不祥事は、PCAOBの監査制度がベースであったにもかかわらず、組織内の不正が横行していたことを浮き彫りにしました。

中国企業への監査

PCAOBは全世界の監査事務所を対象に検査を行い、日本企業もその対象となることがあります。特に、中国企業に対しては監査基準を満たさない場合の上場廃止の法律が可決され、その結果、初めて中国の監査事務所に対する検査が実施されました。これにより、企業の責任感を強め、監査の透明性を向上させることが期待されています。

結論

PCAOBは、公正で信頼性のある監査環境を築くために不可欠な役割を果たしています。監査業務における安全性を確保することで、投資家保護や市場の健全性維持に寄与し続けています。

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