六フッ化テルル

六フッ化テルル（TeF6）

六フッ化テルルは、無色で有毒なガスであり、化学式はTeF6で表されます。この化合物はテルル（Te）のフッ化物で、分子量は241.61です。六フッ化テルルは特有の嫌な臭いを持っており、気体の形態で存在します。

合成方法

六フッ化テルルを合成するための主な方法は、金属テルルにフッ素ガスを150℃の温度で流すことです。このプロセスにおいて、より低い温度では四フッ化テルル（TeF4）や十フッ化二テルル（Te2F10）など、フッ素の成分が少ない混合物が形成されます。また、三酸化テルル（TeO3）とフッ素ガスを反応させたり、二酸化テルル（TeO2）と四フッ化セレン（SeF4）を反応させた後、得られたTeF4を200℃以上で加熱することでも合成されます。これによりテフルオロテルルが生成され、単体のテルルとともに反応します。

特性

六フッ化テルルの分子構造は八面体型で非常に対称性が高いことが特徴です。物理的な特性は、硫黄やセレンといった他の元素の化合物に類似していますが、分子量が大きいため揮発性は低くなります。温度が−38℃以下になると、六フッ化テルルは昇華して白い固体になります。化学的には不活性ではなく、d軌道の反応性が高いため、化学反応に関与しやすい性質を持っています。このことは、硫黄やセレンには見られないf軌道を利用できるためとも考えられています。加水分解によりH6TeO6を生成し、200℃以下では単体テルルと反応を示します。

毒性

六フッ化テルルにあるテルルの化合物は、人体に有害であり、触れると「テルル呼気」と呼ばれるニンニクのような臭いを引き起こします。この臭いは汗や尿にも現れ、被曝した場合には頭痛や呼吸困難、疲労感、皮膚の青黒い斑点、発疹などの症状が見られることがあります。最悪の場合、肺水腫により死に至ることもあるため、暴露された際にはすぐにその場を離れ、医師の診断を受けることが重要です。

テルル呼気の原因

テルル化合物を体内に摂取すると起こるニンニク臭は、体内代謝によって生成されるテルル誘導体に由来します。体がテルルを代謝する過程で、酸化状態に関係なくジメチルテルリド（Te(CH3)2）が生成されます。この物質は揮発性が高く、これが特有のニンニクの臭いの原因となります。

入手方法

六フッ化テルルは一般的には流通しておらず、販売している業者も限られています。価格は50グラムあたり約2,000米ドル程度となっており、非常に貴重な化合物となっています。通常の化学実験室では入手が困難であり、特別な用途に限定されていることが多いです。

参考文献

• - Cooper, W. C. (1971). Tellurium. Van Nostrand Reinhold Company: New York.
• - Bagnall, K. W. (1966). The Chemistry of Selenium, Tellurium and Polonium. Elsevier Publishing: New York.
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• - Greenwood, N. N.; Earnshaw, A. (1997). Chemistry of the Elements, 2nd edition. Butterworth: Oxford.
• - Cotton, F. A.; Wilkinson, G.; Murillo, C. A.; Bochmann, M. (1999). Advanced Inorganic Chemistry. John Wiley & Sons: New York.
• - Hathaway, G. J.; Proctor, N. H. (2004). Chemical Hazards of the Workplace, 5th edition. Wiley-Interscience: New Jersey.

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