六段の調

六段の調について

「六段の調（ろくだんのしらべ）」は、段物と呼ばれる箏の楽曲の一つであり、特に有名な曲として知られています。この曲は、近世箏曲の祖とされる八橋検校によって作曲されたと伝えられています。調弦は平調子が基本ですが、後に雲井調子の替え手が生まれました。

曲の構成と特徴

「六段の調」は、その名の通り六つの段から構成されています。各段は52拍子（初段のみ54拍子）で、リズムが整った独特の構造を持っています。この楽曲は箏の独奏のために作られたもので、歌が伴わない純器楽曲です。江戸時代における古典的な箏曲の代表として、また現代においては背景音楽としても頻繁に利用されています。教育機関では観賞用教材としての役割も果たしています。

本来は箏独奏曲ですが、その後、多くの合奏用の替手が作られ、他の楽器とともに演奏されることも多くなりました。特に三絃や胡弓、尺八といった楽器でもアレンジが施されており、様々な編成での合奏が行われています。

八橋検校の貢献

八橋検校（1614年 - 1685年）は、筑紫流箏曲を基に近世の箏曲の基盤を築きました。彼は箏の楽器自体や奏法の発展に取り組み、雅楽の調弦法に半音を導入したことから、以降は俗箏と呼ばれるようになりました。自身の作品の中では、箏組歌と段物を確立し、箏伴奏による歌曲は後の多くの作曲家に継承されていきました。

八橋が手掛けた「六段の調」や「八段の調」、さらには「乱輪舌（みだれ）」は、いずれも彼の作とされています。しかし、現存する八橋流に伝わる類似曲との相違点が多く、学術的には本曲が完全に八橋の作曲であるとは認識されていません。おそらく彼の弟子である北島検校や、生田検校らによって形作られたと考えられています。

様々な演奏形態

八橋が奏法を改良していた当時は、箏や三味線、一節切などの楽器を用いて、歌謡や器楽曲の小品が演奏されました。「六段の調」は、そのような楽曲の中から「すがかき」と「りんぜつ」を発展させる形で作られたと推測されます。また、当時の流行曲の実例としては『糸竹初心集』（1664年）や『糸竹大全』（1687年以前）が挙げられ、これらの資料ではその時代の音楽的な様子が確認できます。

隠れ聖歌説

一部の学者の間では、「六段の調」とグレゴリオ聖歌「クレド」の音調が似ていることから、この聖歌を元に作曲されたのではないかという説も存在します。これは、楽曲の起源や影響を考える上で非常に興味深い観点となります。

このように「六段の調」は、歴史的にも音楽的にも重要な地位を占めており、今なお多くの人々に愛されている楽曲です。

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