六部興行

六部興行：東宝傍系興行会社の歴史と劇場群

六部興行とは、かつて東宝株式会社の傍系として存在した以下の6社の総称です。

北海道東宝株式会社
東宝東部興行株式会社（後の東宝東日本興行株式会社）
東宝関東興行株式会社（後に東宝東日本興行株式会社に合併）
中部興行株式会社（後の中部東宝株式会社）
東宝関西興行株式会社
東宝九州興行株式会社（後の九州東宝株式会社）

現在は北海道東宝を除き、TOHOシネマズ株式会社に合併し、北海道東宝も解散したため、全て消滅しています。本稿では、六部興行の各社と、各社が経営していた映画館について詳しく解説します。

概要

1950年、経営状況が厳しかった東宝は、主要都市に100館の系列劇場を確保する「百館主義」を掲げ、全国に強大な興行網を形成することを目指しました。東京、名古屋、大阪、京都といった大都市のロードショー館は、戦前から東宝本社が経営しており、興行網の拡大も同社が行いました。一方、主要な地方都市における興行網の拡大は、傍系の興行会社が担うことになりました。

この目的で1951年に設立されたのが、中部興行、東部興行（後の東宝関東興行）、西部興行の3社です。これらの会社は、それぞれ中部地方、関東地方、関西地方を担当地域とし、中小劇場を傘下に収めていきました。また、九州地方は株式会社福岡宝塚会館がこの役割を担い、1961年に東宝九州興行に改称しています。北海道は、東宝本社直営であった5劇場を移管する形で、1962年に東宝北海道興行を設立。1964年には、東宝関東興行から東北地方の劇場を移管する形で東宝東部興行が設立されました。これにより、後に六部興行と言われるようになる6社体制が確立しました。1962年の時点で、直営・傍系合わせて既に135館の劇場を傘下に収めており、百館主義の目標は達成されています。

その後、東宝北海道興行は北海道地区の配給業務を東宝本社から移管され、1970年に北海道東宝に改称。東宝九州興行は東宝九州支社を分割吸収し、1999年に九州東宝に改称。中部興行も同様に東宝中部支社を吸収し、2002年に中部東宝に改称。東宝東部興行は東宝関東興行を吸収する形で、2002年に東宝東日本興行に改称しています。

1960年代に入ると、テレビの影響を受け、映画産業全体が斜陽化していきます。強大な興行網を背景に、この状況に耐えながらも、1980年以降になると、青森、山形、秋田、福島をはじめ、地方の県庁所在地にある劇場が多数閉館しました。中部興行に至っては、赤字に転落することもあったほどです。残った劇場は、従来型の大劇場を分割することで3スクリーンに改装していきました。これは、既に東宝興行部が有楽町マリオンで成功していた、洋画の1番手、2番手、邦画系を「3館セット」とする手法をローカル館にも展開していったためです。

バブル崩壊以降は、土地価格の下落を背景とした外資系シネマコンプレックスの台頭に伴い、1996年頃から「3館セット」の方針を改め、多スクリーン展開へと移行していきます。1997年3月15日には、東宝九州興行が東宝系初の本格的なシネマコンプレックスとなる天神東宝を開館させました。1998年頃には、ローカル館とロードショー館の興行収入が逆転し、六部興行が主に担当しているローカル館が重要になりましたが、シネマコンプレックスに対する出遅れは否めず、東宝系はワーナー・マイカルにスクリーン数で国内1位の座を明け渡しました。

この状況に対し、2003年には東宝が100億円でヴァージンシネマズ・ジャパン株式会社を買収し、TOHOシネマズ株式会社に社名変更。東宝系としてはシェアトップの座に返り咲きました。当初、TOHOシネマズは従来の六部興行と並列での位置づけでしたが、業務効率化のため、東宝系の興行を同社に統合することが2006年に決定。シネマコンプレックス以外を閉館または関西共栄興行に移管した後、2008年3月1日付で東宝東日本興行、中部東宝、東宝関西興行、九州東宝の4社をTOHOシネマズに合併統合しました。当初は北海道東宝も統合予定でしたが、同社のみ統合されず興行会社として存続。しかし、北海道東宝直営の映画館が全て閉館したことや、配給・宣伝事業を東宝に移管したことから、2016年5月31日付で解散しました。

各社の情報と沿革

各社の詳細な情報と沿革については、元記事をご参照ください。

劇場

TOHOシネマズに継承した劇場、関西共栄興行に移管した劇場、閉館または経営から撤退した劇場についても、元記事に詳細な情報が記載されています。

六部興行は、日本の映画産業の発展に大きく貢献した傍系興行会社群でした。その歴史と各社の運営していた劇場群は、日本の映画史を語る上で欠かせない要素です。

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