共通極超音速滑空体

共通極超音速滑空体（C-HGB）

共通極超音速滑空体（Common-Hypersonic Glide Body、C-HGB）は、アメリカで開発が進められている極超音速滑空用弾頭であり、米陸軍の長距離極超音速兵器（LRHW）や海軍の通常型即時攻撃兵器（CPS）に搭載されることが予定されています。この新しい兵器の主な契約者はダイネティクス社であり、開発にはサンディア国立研究所も関与しています。

設計背景

C-HGBの設計は、サンディア国立研究所が陸軍向けに手掛けていた代替再突入システムを基にしています。その技術は1979年から1985年にかけて開発された、サンディア有翼高エネルギー再突入機実験（SWERVE）にまで遡ることができます。SWERVEは全長約100インチで、最高速度マッハ12を達成し、続けてマッハ8での滑空が可能でした。C-HGBはこのSWERVEと異なり、弾頭の形状が二段階に変化する設計がなされています。

2005年から始まった陸軍の先進極超音速兵器（AHW）計画では、代替再突入システムへの予算配分が行われ、国防高等研究計画局（DARPA）が推進していたFALCON計画が困難を極める中、AHWプロジェクトは着実に進展し2011年から試射を開始しました。国防総省は、ロシアや中国の急速な極超音速技術の進展を受けて、AHWを最優先事項として位置付け、海軍もこれを基にした改修型の開発を進め、2017年には試験に成功しています。

実装と機能

もともと陸軍はLRHW、海軍はCPS、空軍は極超音速通常弾頭型攻撃システム（HCSW）にC-HGBを配置する計画でしたが、空軍のHCSWプログラムは2021年に中止されました。これに対し、LRHWは敵の接近阻止や領域拒否能力に対抗するために設計されています。このシステムはC-HGBを搭載した地上発射ミサイルと、関連する輸送および射撃管制装置から構成されており、現在「ダークイーグル」という名称で進行中です。

LRHWのミサイルはロッキード・マーチンとノースロップ・グラマンによって開発されており、射程は報告により1,725マイル（約2,775 km）以上に拡大しています。2021年10月には陸軍へ発射機のプロトタイプが納入され、2023年には実戦配備を目指して訓練とテストを進めています。

一方、海軍が扱うCPSは、潜水艦からの発射に特化した通常型即時攻撃兵器です。初期の計画名は「通常型即時全地球規模攻撃」とされ、既存の潜水艦発射弾道ミサイルを使用する構想でした。2023年2月にはロッキード・マーチンが米海軍との契約によりズムウォルト級ミサイル駆逐艦にCPSを搭載する計画を発表しました。

今後の展望

C-HGBは陸海空の各軍において極超音速対策の中核を担う重要な技術となることが期待されています。米国政府は日本への配備を模索していますが、同時に日本の安全保障政策との調整も求められるでしょう。極超音速技術の進展により、今後の軍事戦略は大きな変化を迎える可能性があります。

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