ズムウォルト級ミサイル駆逐艦

ズムウォルト級ミサイル駆逐艦：未来型ステルス駆逐艦の全貌

ズムウォルト級ミサイル駆逐艦（Zumwalt-class destroyer）は、アメリカ海軍が開発した最新鋭のミサイル駆逐艦です。その最大の特徴は、徹底的なステルス性と強力な対地攻撃能力を両立させている点にあります。しかし、先進的な技術を多数採用した結果、コストが大幅に増大し、当初計画されていた大量建造は大幅に縮小されました。

開発の背景

ズムウォルト級の起源は、1980年代末に提唱された「打撃巡洋艦」構想に遡ります。これは、空母艦載機による対地攻撃を、沖合からのミサイル攻撃で代替するというものでした。そのため、敵に察知されないためのステルス性と、多数の目標を攻撃できるVLS（垂直発射システム）の搭載が重視されました。

1990年代には、この構想は「アーセナル・シップ」として具体化されます。しかし、アーセナル・シップは乗員やセンサーを最小限に抑え、外部からの情報に依存するという大胆なコンセプトでした。

1995年、アメリカ海軍は将来水上戦闘艦開発プロジェクト「SC-21」を開始し、アーセナル・シップ構想もその一部として組み込まれました。SC-21では、オリバー・ハザード・ペリー級[[ミサイルフリゲート]]、スプルーアンス級[[駆逐艦]]、タイコンデロガ級[[ミサイル巡洋艦]]の後継となる水上戦闘艦が構想され、対地精密攻撃、戦闘空間の支配、C4ISR機能などが重視されました。

しかし、2001年、SC-21計画は中断され、再計画が行われます。これは、任務の多様化、沿海域戦闘への不適合、コスト上昇などが理由でした。再計画の結果、CG(X)（巡洋艦の後継）、DD(X)（駆逐艦の後継）、LCS（沿海域戦闘艦）の3艦種が開発されることになりました。

設計の特徴

ズムウォルト級は、満載排水量14,000トンを超える大型艦です。その特徴的な設計として、以下の点が挙げられます。

タンブルホーム船型： 船体上部が内側に傾斜したタンブルホーム船型を採用することで、レーダー反射断面積（RCS）を大幅に低減しています。
波浪貫通型艦首： 波浪を切り裂くように進む波浪貫通型艦首を採用することで、高速航行時の抵抗を低減しています。
統合複合材構造： 上部構造物に複合材を使用し、レーダー反射を抑制しています。
統合電気推進（IPS）： ガスタービン発電機で発電した電力で推進するIPSを採用することで、静粛性を高め、電力供給の効率化を図っています。

これらの設計により、ズムウォルト級は従来の艦艇よりも格段に高いステルス性を実現しています。

搭載兵器

ズムウォルト級は、強力な対地攻撃能力を備えています。主な搭載兵器は以下の通りです。

Mk.57 VLS： 船体側面に配置されたMk.57 VLSには、ESSM（発展型シースパローミサイル）やトマホーク巡航ミサイルなどを搭載できます。
155mm先進砲システム（AGS）： 射程100kmを超える長距離砲弾を発射できるAGSを2基搭載し、対地火力支援能力を高めています。しかし、AGS用の長距離砲弾（LRLAP）の開発が中止されたため、AGSの運用は困難になっています。
Mk.110 57mm速射砲： 近接防御用のMk.110 57mm速射砲を2基搭載する予定でしたが、後に30mm機関砲に変更されました。

今後の展望

ズムウォルト級は、その先進的な設計と高いステルス性により、将来の海軍戦力の中核を担うことが期待されています。しかし、コスト高騰により建造数は3隻に削減され、AGSの運用も不透明な状況です。

今後は、既存のアーレイ・バーク級[[ミサイル駆逐艦]]の改良や、次世代駆逐艦の開発が進められると考えられます。ズムウォルト級で培われた技術は、これらの艦艇に活かされることになるでしょう。

登場作品

ズムウォルト級は、その特徴的な外観から、多くのフィクション作品に登場しています。

映画: 『009 RE:CYBORG』
小説: 『超日中大戦 空母戦闘群激突』、『トランスフォーマー/リベンジ|トランスフォーマー_リベンジ』
ゲーム: 『エースコンバット インフィニティ』、『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』、『鋼鉄の咆哮シリーズ』、『Modern Warships』

まとめ

ズムウォルト級ミサイル駆逐艦は、アメリカ海軍が技術の粋を集めて開発した未来型ステルス駆逐艦です。その革新的な設計は、今後の海軍艦艇に大きな影響を与えると考えられます。しかし、コスト高騰という課題を克服し、本来の性能を発揮できるかが今後の焦点となります。

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