極超音速滑空体

極超音速滑空体（HGV）についての詳細

概要

極超音速滑空体（HGV）は、弾道ミサイルから発射され、任意の高度で滑空飛行を行うことで敵の防空システムを回避しつつ、高速で目標に接近する新型兵器です。HGVは、30から100キロメートルの高度に達した後、弾道飛行から滑空飛行へと移行します。この滑空飛行中、スキップ・グライド飛行と呼ばれる手法を用いることで、比較的低い高度のまま長距離を飛行することが可能です。

極超音速の定義

「極超音速」という言葉は、マッハ5以上の速度を指しますが、現状では多くの国が開発しているHGVは、マッハ10を達成しており、場合によってはマッハ15を目指すものも存在します。これにより、発射から着弾までの時間が大幅に短縮され、発射後における目標の位置や状況の変化に与える影響が軽減されます。これにより、意思決定の際の時間的余裕が生まれます。

防空システムへの影響

HGVの大きな利点は、極超音速性能と滑空飛行の特性によって、敵の防空システムが対処しにくくなる点です。従来の弾道飛行をする兵器では、高高度で接近するため、早期警戒レーダーによって先に探知される可能性が高いですが、HGVは100キロメートル以下の低高度を滑空します。これにより、目標に非常に近づくまでは探知されにくい特徴があります。

レーダーによる探知

ランド研究所の推計によれば、射程3000キロの弾道ミサイルが放出した再突入体（RV）は着弾の12分前に地上のレーダーに探知されるのに対し、HGVは着弾の6分前にならないと発見されないとされています。また、HGVは細長い形状をしているため、飛行中に発生する熱量が少なく、衛星による探知も困難になります。

変則的な飛行軌道

HGVは滑空による飛行のため、衛星測位システム（GNSS）を用いた誘導が可能で、複雑な飛行軌道を取ることができます。このため、従来の弾道弾迎撃ミサイル（ABM）では対応しきれないことが多く、特に大気圏内での交戦には対応していないものが多いです。また、短射程のミサイルではHGVの複雑な機動についていけず、迎撃は非常に困難になります。

機動能力の比較

HGVは機動可能な弾頭であり、機動再突入体（MaRV）と似た特性がありますが、MaRVは基本的に弾道飛行するため、ABMによる迎撃リスクが高く、機動性においても劣っています。このように、HGVはその特性によって、他の兵器と比較しても一線を画す存在となっています。

各国のHGV開発状況

HGVの開発は世界中で加速しており、以下のような各国の代表的なHGVが存在します。

• - アメリカ合衆国

- Falcon HTV2（実験機）
- AGM-183 ARRW（空中投下型）
- 共通極超音速滑空体（C-HGB、地・艦上発射型）
- OpFires

• - ロシア

- アバンガルド

• - 中国

- DF-ZF

• - 北朝鮮

- 火星8
- 火星16b

• - 日本

- 島嶼防衛用高速滑空弾（事実上のHGV、2025年度配備予定）

HGVは今後の戦争において、ますます重要な役割を果たすことが予想されます。その技術進歩とともに、各国の防衛力のバランスにも大きな影響を及ぼすでしょう。

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