共食い整備

共食い整備について

共食い整備（ともぐいせいび、英: cannibalism maintenance）とは、機械や器具を修理する際に複数の機体から部品を取り出して一つの正常な個体に組み立てる方法を指します。この手法は、特に修理に必要な部品を入手するのが難しい場合に採られることが多く、部品が不足する状況において実効的な解決策となります。

共食い整備の実施例

日本の自衛隊、特に航空自衛隊では、F-2戦闘機やP-1哨戒機、F-15J戦闘機などにおいて共食い整備が一般的になっています。防衛省の調査によると、全装備品のうち稼働しているのは半分程度で、残りの機体の多くが整備中や部品の不足に苦しんでいる状況が明らかになっています。特にF-2は予算不足により部品を確保することが難しく、共食い整備が日常的に行われています。

元航空自衛隊補給本部長の吉岡秀之氏は、共食い整備が増えている原因について、在庫不足と緊急調達が間に合わない状況を指摘しています。2010年代初頭から航空機の整備中に他の機体から部品を移動させることが増え、特に平成24年度には約2000件だった共食い整備は平成30年度には5600件に増加しました。2021年には約3400件にも及ぶ兆候が見られました。

共食い整備の特徴は、通常の整備に加えて部品を取り外す作業が必要であるため、整備員の負担が増加する点にあります。これにより、訓練時間の減少や部隊の可動率低下といった影響が生じる場合もあります。例えば、東日本大震災で水没した松島基地のF-2戦闘機は、ニコイチ修理と呼ばれる方法で再生されました。

民生品における共食い整備

民生品にも共食い整備が行われることがあります。例えば、1999年から2006年に販売されていた旧世代型ロボットAIBOは、2014年に販売元のSONYによってサポートが打ち切られたため、2018年にはユーザーから提供された故障機から部品を取り出して修理に利用されています。このような場合、部品を提供する機体には合同葬儀が行われ、その後に部品を取り出されることになります。

海外の共食い整備

アメリカにおいても、1969年のアポロ12号が発射前日になって燃料タンクに不具合が発生した際、アポロ13号からタンクを交換するという共食い整備が行われました。このように、緊急時には他の機体の部品を流用することが重要です。宇宙往還機スペースシャトルの運用開始時には、補修部品の生産が追いつかず、同様のことが発生しました。これがチャレンジャー号の爆発事故の一因とも考えられています。

韓国空軍でもKF-16戦闘機に対し共食い整備が行われており、2016年には稼働率が82%に達するなど、整備の工夫がなされています。また、韓国の高速鉄道では部品不足により他の編成から部品を流用するケースも常態化しています。

戦争における共食い整備

戦争中、前線においても共食い整備は重要な役割を果たします。破損した兵器を修理するため、複数の機体から部品を取り出し、機能する機体を再生することが行われています。たとえば、自軍の戦車の車体と砲塔を組み合わせ、運用可能な一両の戦車を作り上げることができます。さらに、敵軍から鹵獲した兵器も同様の方法で活用されることがあります。補給が滞った場合や経済状況が芳しくない時には、共食い整備が有効な選択肢となるのです。

以上が共食い整備の概要や実施例、他国の状況についてのまとめです。この手法は、部品の確保が難しい環境において、クリエイティブな解決策として機能しています。

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