兵庫県立丹波並木道中央公園

兵庫県丹波篠山市に位置する「兵庫県立丹波並木道中央公園」は、丹波地域で初めて整備された広域公園です。2007年 10月14日に開園したこの公園は、「丹波の森構想」に基づき、人々のレクリエーションの場として、また都市と農村を結ぶ交流拠点として、さらには地域活性化の一翼を担うことを目指し整備されました。約70.9ヘクタールという広大な敷地は、元々あった山林の自然環境を極力活かす形で造営されています。

公園のある丹波篠山市西古佐地区は、篠山盆地の西端に位置し、市街地からは車で約15分（約6キロメートル）ほどの距離にあります。標高318メートルの三釈迦山のふもとに広がるこの地域は、美しい田園風景が特徴です。周辺には白髭岳や松尾山といった山々、篠山川が流れ、近くを福知山線や県道77号、さらに舞鶴若狭自動車道の丹波篠山インターチェンジも通っており、比較的アクセスしやすい場所にあります。また、三釈迦山の北麓の丘陵地帯には、桂ヶ谷遺跡をはじめとする集落跡や古墳群など、古代からの歴史を物語る遺跡が点在しており、この地域の歴史的な深さも感じさせます。

主な施設と特徴

広大な敷地には、多様な施設が点在し、来園者に様々な楽しみを提供しています。

公園管理棟: 公園の入口近くにあり、管理事務所を兼ねています。周辺地域の情報展示も行われ、公園散策の拠点となります。
茅葺民家: 明治初期に篠山市内に実在した庄屋宅を移築復元した建物です。当時の豪壮な民家建築である「六間取り」の形式を再現し、囲炉裏やかまどなども設けられています。建物周囲には四季折々の野草が配された美しい和風庭園があり、日本の伝統的な暮らしや風景を体験できます。
森林活動センター: 公園内の森で育ったスギやヒノキを活用する施設で、製材所と木工施設があります。ここでは木工教室が開催され、木材を使った創作体験が可能です。
棚田: 公園整備以前から存在した約2200平方メートルの棚田を活かし、古代米の一種である赤米や丹波黒豆などが栽培されています。秋には一般参加可能な収穫体験イベントも開催され、地域と連携した取り組みは「手づくり郷土賞」を受賞しています。
灰屋・かぐや: 灰屋は伝統的な焼灰を作る小屋、かぐやは竹を仕込んだ壁と瓦屋根の休憩小屋です。これらは地域の伝統的な建築や技術に触れることができる施設です。
ローラー滑り台: 公園内に少ない遊具の一つで、全長50メートルあります。
広場・散策路: 芝生広場、森の広場など多様な広場が整備されており、自由に過ごすことができます。里山をそのまま利用した散策路を進むと、山頂の展望台からは公園全体や篠山盆地の美しいパノラマ風景を一望できます。
なみきみち化石発掘体験コーナー: 公園工事の際に採掘された、約1億4000万年～1億1000万年前の篠山層群の岩石や土砂を利用した体験施設です。ここでは、化石発掘の体験を通じて、丹波地域の地質や古生物について学ぶことができます。

恐竜化石の重要な発見地

この公園とその周辺地域は、古生物学的に非常に重要な場所となっています。2011年9月には、公園内の残土から恐竜の化石が複数発見されたと発表されました。これは、この地域に分布する約1億1000万年前の前期白亜紀の地層、篠山層群下部層から産出したものです。発見された化石の中には、2010年に見つかっていたデイノニコサウルス類（鳥類に近い肉食恐竜）の後脚の一部や、基盤的ネオケラトプス類（トリケラトプスなどの祖先群）の大腿骨や顎などの部位が含まれていました。これらの化石は、兵庫県立人と自然の博物館の研究者らによって発掘されました。公園の西約6キロメートルには、大型植物食恐竜として知られる「丹波竜」の発見現場があり、この公園周辺も新たな化石が密集して産出する可能性が指摘されています。

さらに、2024年7月には、公園内で発見されたデイノニコサウルス類の化石が学術論文として正式に記載され、「ヒプノヴェナトル・マツバラエトオオエオルム」という新属新種として命名されました。これは、丹波地域が白亜紀における多様な恐竜が生息していたことを示す重要な証拠となっています。

公園運営上の課題

自然豊かな環境であるため、開園当初からしばしばイノシシによる園内の芝生などの掘り起こし被害が発生しています。特に2021年秋には広範囲に被害が及び、その復旧には多額の費用が必要となるなど、自然との共生における課題も抱えています。

兵庫県立丹波並木道中央公園は、広大な自然の中で多様なレクリエーションや体験活動が楽しめるだけでなく、地域の歴史や文化に触れ、さらには貴重な恐竜化石の発見地として学術的な興味も満たせる、多角的な魅力を持つ公園と言えるでしょう。

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