丹波竜

丹波竜（タンバティタニス・アミキティアエ）

丹波竜は、2006年 8月7日に兵庫県丹波市で発見された恐竜化石、またはその化石に基づいて推定される恐竜そのものを指します。この発見は、日本の恐竜研究において重要な転換点となりました。2014年 8月12日には、新属新種として正式に認められ、「タンバティタニス・アミキティアエ」という学名が与えられました。この学名は、発見地の丹波、ギリシャ神話の巨人ティタニス、そして発見者二人の「友情」を意味するラテン語のアミキティアエに由来します。

発見の経緯

丹波竜の化石は、丹波市在住の二人の男性によって篠山川の河床で発見されました。当初は小さな化石の一部でしたが、専門家の鑑定により、中生代白亜紀に繁栄した竜脚類の一種であるティタノサウルス形類に属する可能性が高いと判断されました。ほぼ全身に近い骨格が良好な状態で保存されている可能性があり、この種の系統進化を解き明かす上で非常に貴重な資料として、大きなニュースとなりました。現在は発掘作業は一旦終了しています。

篠山層群

丹波竜が発見された篠山層群は、中生代白亜紀前期（約1億4000万年前から1億2000万年前）に形成された地層です。当時は日本が大陸の一部であったため、恐竜が生息していたと考えられていましたが、実際に恐竜の化石が産出したのは初めての事例でした。発掘現場は、礫岩、砂岩、泥岩といった地層が重なっており、恐竜の化石は泥岩層の中から発見されました。

哺乳類化石の発見

篠山層群からは、恐竜の化石だけでなく、原始的な哺乳類の化石も発見されています。2007年から2008年にかけて行われた発掘調査では、国内最古の哺乳類化石が発見され、「ササヤマミロス・カワイイ」と名付けられました。これは、篠山層群を意味する「ササヤマ」と、ギリシャ語で臼（歯）を意味する「ミロス」、そして丹波篠山市出身の霊長類学者である河合雅雄氏にちなんだものです。前期白亜紀の哺乳類化石は世界的にも発見例が少なく、篠山層群の発見は非常に重要な意味を持っています。

発掘調査の沿革

- 2006年 8月7日: 足立洌と村上茂が篠山川で地質調査中に化石を発見。
- 2006年8月9日: 発見された化石を兵庫県立人と自然の博物館に持ち込み、恐竜の肋骨であることが判明。
- 2007年1月3日: 恐竜化石の発見が報道され、緊急記者会見が行われる。
- 2007年1月13日: 草食恐竜の肋骨などの化石と、肉食恐竜の歯が発見されたことが公式発表される。
- 2007年2月: ボランティアによる本格的な発掘作業が開始。
- 2007年3月: 尾椎とみられる化石が多数発見され、含化石岩盤が搬出される。
- 2008年1月: 第二次発掘調査が開始され、カルノサウルス類の歯の化石が発見される。
- 2008年2月: 環椎（首の骨）が発見される。
- 2009年1月: 第三次発掘調査が開始。

命名と商標登録

第一発見者によって「丹波竜」という愛称が命名されました。地域の人々に親しんでもらえるように、そして語呂の良さを考慮して決定されました。商標登録は、金儲けとの誤解を避けるため、丹波市によって申請されました。

地域への影響

丹波竜の発見は、丹波市に大きな経済効果をもたらしました。「恐竜ラーメン」や「恐竜うどん」など、恐竜にちなんだ商品が多数開発され、観光客を呼び込むきっかけとなりました。丹波市は「恐竜を活かしたまちづくり課」を発足させ、「恐竜化石保護条例」を施行するなど、地域振興に力を入れています。2018年には、丹波市を舞台とする映画『恐竜の詩』が公開され、2021年には映画館も開館しました。

丹波竜