兵庫運河

兵庫運河とは

兵庫運河は、神戸市兵庫区に存在する五つの運河（兵庫運河、兵庫運河支線、新川運河、苅藻島運河、新湊川運河）の総称です。全長6470メートル、水面積337300平方メートルに及ぶこの運河は、古来より風波が高く船舶の航行が困難であった和田岬を迂回する目的で建設されました。運河周辺には、大輪田泊や兵庫津といった歴史的な観光資源が点在しています。

歴史

兵庫運河の建設は、明治時代に入り、神戸の貿易拠点が兵庫港から神戸港へ移ったことを背景に、兵庫港周辺の経済活性化を目指して計画されました。神戸の商人、神田兵右衛門が中心となり、1874年に工事が開始されましたが、難航を極め、1875年または1876年に船舶の避難地として新川運河が完成するに留まりました。

その後、八尾善四郎が中心となって1896年に工事が再開され、1899年12月に運河全体が完成しました。これにより、和田岬を避け、須磨・駒ヶ林方面と兵庫港の間を安全に航行することが可能となりました。この工事で発生した土砂は、大阪湾の埋め立てに使用され、苅藻島（神戸市長田区）が造成されました。

運河は、完成後、港湾物流に大きく貢献し、大正から昭和初期にかけて周辺地域は一大商工業地帯として発展しました。しかし、第二次世界大戦後には貯木場としても利用されたため、水質汚染が進み、生物が生息しにくい環境となってしまいました。2005年に貯木場が廃止されて以降、運河の経済活動への利用は減少し、現在はプロムナードが整備され、レクリエーションや水上スポーツ、地域イベントなどが行われる場へと変わりつつあります。

環境改善への取り組み

近年、兵庫運河の環境改善に向けた様々な取り組みが行われています。兵庫漁協は2012年からアサリの養殖を開始しました。アサリなどの二枚貝は、水をろ過して浄化するだけでなく、その卵や稚貝が他の生物の食料となることで、魚が住みやすい環境を作る役割を果たしています。また、2015年からは里山の手入れで出た竹や木を運河に沈め、イカやエビの住みかを作る実験も行われています。

特徴

兵庫運河には、日本最古かつ最初の鉄道可動橋である和田旋回橋が、JR和田岬線の橋梁として架かっています。現在は回転機構が撤去され固定されていますが、その歴史的な価値は今も変わらず高く評価されています。

また、運河沿いには、鉄道車両を製造する川崎車両兵庫工場（旧川崎重工業車両カンパニー）が所在し、同工場で生産された鉄道車両（主にJR東日本向けの新幹線車両）の海上輸送ルートとして利用されています。

まとめ

兵庫運河は、その歴史的な背景と役割、そして現在の環境改善への取り組みを通じて、神戸の発展に深く関わってきた重要な場所です。過去には物流拠点として栄えましたが、現在は市民の憩いの場として、新たな役割を担っています。運河を訪れることで、神戸の歴史と未来を感じることができるでしょう。

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