内山勝 (ロボット研究者)

内山勝：日本のロボット研究を牽引した先駆者

内山勝（うちやま まさる）は、1949年9月16日に福岡県で生まれ、2023年9月2日に逝去した、日本のロボット研究者です。東京大学で工学博士号を取得後、東北大学で長年にわたり教鞭を執り、名誉教授の称号を授与されました。正四位という位階も授与されています。

生い立ちと研究への目覚め

幼少期、実家のラムネ屋にあった機械や、工作、写真に興味を持ち、ものづくりへの関心を育みました。中学・高校時代にはホバークラフトの製作や写真の現像を趣味とし、理科や数学への関心から研究者を志すようになりました。東京大学では、当初、機械工学と化学で進路を迷いましたが、ものづくりへの情熱から工学部産業機械工学科に進みました。

東京大学での研究

東京大学では、藤井澄二教授や吉本堅一教授のもとで、ロボットの動的な動きの研究に取り組みました。修士課程では、ロボットによる釘打ちや、制御モードの切り替えによるクランク回しなど、革新的な成果を上げました。特に注目されるのは、6自由度ロボットアーム「D-HAND」を用いた、繰り返し試行によるロボットの学習制御を初めて実現したことです。さらに、カメラと画像処理を組み合わせることで、ボールを拾い、投げる動作も可能にしました。これらの研究成果は、三菱電機の電動ロボット開発にも影響を与えました。

東北大学での研究活動

1977年、東北大学に着任した内山は、助教授、教授として研究を続けました。流体計測の研究にも携わる一方、ロボット研究においては、6軸力覚センサの研究で特異値分解による構造評価の手法を確立しました。宇宙ロボットを視野に入れたフレキシブルマニピュレータの研究では、可補償性を提案し、「FLEBOT II」や「ADAM」などの双腕ロボットを開発しました。

1992年には教授に昇進し、宇宙ロボットの研究に本格的に取り組みました。豊田工機と共同でパラレルロボット「HEXA」を開発し、宇宙科学研究所の教授も併任し、ETS-VIIの遠隔操作実験にも参画しました。また、ヒューマノイドロボットの研究開発にも力を注ぎ、「才賀」シリーズを制作しました。2005年の愛地球博では、HRP-2を用いた太鼓敲きを披露し、スズキとは自動車のワイヤーハーネス取り付けロボットの共同開発も行いました。日本ロボット学会では副会長を務め、多くの委員会の委員長も歴任しました。

また、教育者としても熱心で、大学院生向けに航空ロボット制作を取り入れたり、研究室では、花見やバーベキュー、芋煮会など、親睦を深める活動も大切にしていました。

その他の活動

東北大学大学院工学研究科長や総長補佐も務めた後、2015年に東北大学を定年退職しました。その後も、みやぎ産業振興機構のテクニカルアドバイザーや、日本IFToMM会議での特別講演など、様々な活動を行いました。著書に『ロボットモーション』や翻訳書『ロボティクスの幾何学的基礎 第2版』があり、数々の学会誌にも論文を発表しました。

人柄と研究への情熱

内山は、ロボット研究への強い情熱を持ち、「人間の動作を機械で実現すること」を基本に据えていました。研究では、ロボットにさせたい作業を実現するために、問題点を解明していくというスタンスを貫きました。また、ロボットが整然と動いたときの感動や、それを一人で組み上げられる満足感を、研究の醍醐味としていました。

学生に対しては、実験で装置を壊しても決して怒らず、失敗から学ぶことを推奨しました。これは、恩師の「学生が実験室で機械を壊しても絶対に怒ってはいけない」という教えに基づいています。

社会的貢献と受賞歴

内山は、IEEE、日本機械学会、計測自動制御学会、日本ロボット学会などのフェローを務め、数々の賞を受賞しています。計測自動制御学会では論文賞や技術賞、著述賞を受賞し、日本ロボット学会では論文賞や技術賞、設立特別功労賞を受賞しています。また、日本機械学会でも論文賞や部門功績賞を受賞するなど、ロボット工学分野における貢献は計り知れません。

まとめ

内山勝は、日本のロボット研究の発展に多大な貢献をした先駆者であり、その研究はロボット工学の基礎を築き、多くの研究者に影響を与えました。彼の遺した功績は、今後もロボット工学の発展に貢献し続けるでしょう。

主な研究分野
ロボット学習制御
動的制御
6軸力覚センサ
パラレルロボット「HEXA」
宇宙ロボット
フレキシブルアーム制御
ヒューマノイドロボット
カーロボティクス

主な役職
東北大学名誉教授
宇宙科学研究所教授（併任）
東北大学大学院工学研究科長
日本ロボット学会副会長

主な著書
『ロボットモーション』
『ロボティクスの幾何学的基礎 第2版』（翻訳）

主な受賞
計測自動制御学会 論文賞、技術賞、著述賞
日本ロボット学会 論文賞、技術賞、設立特別功労賞
日本機械学会 論文賞、部門功績賞

その他
IEEEフェロー、ライフフェロー
日本機械学会フェロー
計測自動制御学会フェロー
日本ロボット学会フェロー
日本IFToMM会議フェロー
* 日本工学アカデミー正会員

内山勝の研究業績、教育活動、人柄は、日本のロボット工学史において特筆すべき存在として、長く記憶されることでしょう。

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