内池望博

内池望博：日本の音響芸術に貢献した巨匠

内池望博（うちいけ もちひろ）氏は、1937年1月8日生まれの日本の音響監督、CMディレクト、映画プロデューサーです。長年に渡り、東北新社の発展に貢献し、現在も顧問として活躍されています。浅草生まれの彼は、中学生時代に街頭テレビで見た映像に魅せられ、テレビ業界を志すようになりました。日本大学芸術学部演劇学科卒業後、フジテレビの中継班でアルバイトとして経験を積み、その後、縁あって1961年1月、東北社（後の東北新社）に入社します。

入社3ヶ月目という異例の早さで演出家デビューを果たした内池氏は、その後、数々の吹き替え作品を手がけ、日本の吹き替え業界の草創期から活躍した第一人者となりました。特に、ジャック・レモン出演作品を多く担当し、レモンの専属声優だった愛川欽也氏と多くの作品でタッグを組みました。この関係をきっかけに、愛川氏が出演するナショナル（現パナソニック）のテレビCMの演出を担当。高い評価を受け、1971年からはCMディレクターとしての活動も開始します。

内池氏のCMディレクターとしての才能は、数々の名作CMを生み出しました。中でも、愛川欽也氏が出演した松下電器産業（現パナソニック）のテープレコーダー「MAC」のCM「あんた松下さん？」は、社会現象を巻き起こすほどの人気となりました。このCMで、MACに向かって伸びてくる手は実は内池氏自身の手だったというエピソードも有名です。

彼の演出の特徴は、日本語の自然な会話表現を重視した点にあります。吹き替え演出においては「面白けりゃいいじゃないか」というシンプルな信念のもと、作品にユーモアと深みを与えました。代表的な例として、『奥さまは魔女』のナレーションが挙げられます。中村正氏による印象的なナレーションは、内池氏と中村氏の綿密な作業によって、わずか2行の台詞にもかかわらず一日かけて完成させたものです。

内池氏は、演出のみならず、プロデューサーとしても活躍しました。数多くの映画やテレビドラマの制作に携わり、その幅広い活動は日本の映像業界に大きな影響を与えました。また、近年は映像テクノアカデミアで講師を務め、後進の育成にも力を注いでいます。

内池氏の人物像は、大学時代の同級生だった声優の広川太一郎氏とのエピソードからも垣間見えます。「コンビで組んで学校を私的なものにする悪い仲間でした（笑）」という内池氏自身の言葉には、彼のユーモラスな性格と人との繋がりを大切にする姿勢が表れています。多くのコメディ作品で広川氏を起用していたことも、二人の親密さを物語っています。さらに、イッセー尾形氏の一人芝居にも、内池氏の口調や仕草をモチーフにした作品が存在するなど、彼の存在感は多岐に渡ります。

内池望博氏は、単なる音響監督、CMディレクター、映画プロデューサーの枠を超え、日本のエンターテインメント界に多大な貢献を果たした人物と言えるでしょう。彼の仕事は、数々の名作を通して、人々の記憶に刻み込まれ続けています。彼の残した作品群と、その独特の人物像は、今後の日本の映像文化を語る上で欠かせない存在となるでしょう。

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