内浦アイヌ

内浦アイヌについて

内浦アイヌ（うちうらアイヌ）は、17世紀に北海道の内浦湾の西岸、渡島半島側に居住していたアイヌ民族の集団です。この名称は歴史学者の海保嶺夫によるもので、アイヌ民族が自ら名乗った記録は残っていません。しかし、18世紀に北海道全域を遍歴した蝦夷通辞の上原熊次郎によれば、内浦湾の西部に「ホレバシウンクル」と「ウシケシュンクル」と呼ばれる集団が存在しており、これらが内浦アイヌの後裔であると考えられています。

歴史的背景

『津軽一統志』の記録によると、内浦湾西部、つまり現在の尻岸内から長万部にかけて、シャクシャインの戦いが起きた当時、惣乙名アイコウインがこの地域を治めていたとされています。このため、内浦アイヌの居住地もアイコウインの管轄下にあったことが伺えます。しかし、同時期に記された『寛文拾年狄蜂起集書』によれば、白老以西の内浦湾周辺には空屋が多く、シュムクルやメナシクルといった他の大集団に比べて、内浦アイヌは比較的小規模な存在であったとされています。

シャクシャインの戦い

シャクシャインの戦いの際、アイコウインは表面上は松前藩に従い続けていましたが、シャクシャインが松前藩に勝利を収めた際には、アイコウインは彼に合流することを計画していました。アイコウインは密かに道東のメナシクルと連携し、松前藩に対してスパイを送り込むなどの活動を行っていました。しかし、クンヌイ（国縫）での戦いでアイコウイン側が敗北したことで、内浦アイヌは松前藩に対する反乱を公然と起こすことはありませんでした。

内浦アイヌのその後

シャクシャインの戦い以降、内浦アイヌに関する詳細な情報は不足していますが、上原熊次郎の探検によって彼らの存在は再確認されました。彼の記録によると、18世紀にはアイコウインが内浦アイヌを統率していたことが明らかになり、彼らはウシケシュンクルやホレバシウンクルといった名称で認識されていたことがわかります。

このように、内浦アイヌはアイヌ民族の歴史において重要な役割を果たし、その文化や地域社会の形成にも貢献していました。それでも彼らに関する記録は限られているため、さらなる研究が必要です。なお、内浦アイヌの歴史は日本の民俗や民族の多様性を理解する上でも重要な要素となっています。

参考文献

• - 大井, 晴男「シャクシャインの乱（寛文9年蝦夷の乱）の再検討」『北方文化研究』第21号。
• - 海保, 嶺夫『日本北方史の論理』雄山閣出版。
• - 河野, 広道「アイヌの一系統サルンクルに就て」『人類学雜誌』第47巻第4号。
• - 平山, 裕人『アイヌ史を見つめて』北海道出版企画センター。

もう一度検索