内海一郎

内海一郎（うつみ いちろう）は、1898年（明治31年）5月7日に東京府（現在の東京都）で生まれ、1972年（昭和47年）に生涯を閉じた、昭和初期に活躍した日本の歌手、舞台演出家です。

浅草オペラが隆盛を誇った時代には、宇津美清（うつみ きよし）という名で広く知られていました。彼の才能は歌唱に留まらず、舞台演出にも発揮され、多才な人物として名を馳せました。また、歌手の松島詩子と結婚し、夫婦で音楽界を盛り立てました。

経歴

1916年（大正5年）に東京音楽学校を卒業後、内海は浅草オペラの世界に足を踏み入れました。1917年（大正6年）には、佐々紅華が率いる東京歌劇座に参加し、河合澄子、天野喜久代、千賀美寿一らとともに舞台に立ちました。この時期は、彼の音楽キャリアの基礎を築いた重要な時期と言えるでしょう。

レコード制作においては、宇津美清名義でニッポノホンからお伽歌劇などをリリースしていました。昭和期に入ると、オリエントやニットーレコードでジャズソングを数多く録音し、その歌声は多くのファンを魅了しました。特に、1929年（昭和4年）4月に発売された『道頓堀行進曲』は、当時の大ヒット曲となり、彼の名声を不動のものとしました。また、ニットー東京支社ではレコーディングディレクターとしても手腕を発揮しました。

1940年（昭和15年）には、同じく歌手であった松島詩子と結婚し、その仲睦まじい様子から「おしどり夫婦」と称されました。戦後は、舞台演出家としての活動に力を注ぎ、多くの作品を手がけました。

内海一郎の功績は、歌手としての活動だけでなく、舞台演出家としても日本の音楽文化に大きく貢献したことです。彼の音楽は、時代を超えて多くの人々に愛され続けています。

代表曲

内海一郎の代表曲は多岐にわたります。以下に主なものを列挙します。

『銀座行進曲』（作詞：正岡容、作曲：塩尻精八、1928年12月）
『道頓堀行進曲』（作詞：日比繁次郎、作曲：塩尻精八、1928年12月）
『敦賀よいとこ』（作詞：丘伸衛、作曲：伊野冷晃、1929年）
『エンゼラミア』（作曲：エルノ・ラペー、1929年5月）
『草津節』（群馬県民謡、編曲：篠原正雄、1929年5月）
『うるはしの君』（訳詞：中村彼路子、編曲：篠原正雄、1929年5月）
『モンパリ』（作詞：中村彼路子、作曲：J.ボアイエ・V.スコット、1929年6月）
『行進曲紐育』（作詞：中村彼路子、編曲：篠原正雄、1929年6月）
『東京夜曲』（1929年）
『登山の唄』（作詞：小国比佐志、作曲：船橋栄吉、1929年）
『串本節』（和歌山県民謡、編曲：島田治一、1929年）
『笑はれる彼奴』（作詞：岡二郎、作曲：ジャック・オッフェンバック、1929年）
『わしゃ腹が立つ』（作詞：岡二郎、編曲：島田治一、1929年）
『蝶々さん』（作歌：内海一郎、作曲：ジャコモ・プッチーニ）
『布晆アロハオエ』（作歌：内海一郎）
『故郷の空』（スコットランド民謡）
* 『流浪の旅』（作詞：後藤紫雲、作曲：宮島啓二）

これらの楽曲は、内海一郎の多様な音楽性を物語っており、彼の才能がいかに豊かであったかを今に伝えています。彼の音楽は、日本のポピュラー音楽史において、重要な位置を占めています。

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