内田クレペリン精神検査

内田クレペリン精神検査

内田クレペリン精神検査は、個人の性格特性や仕事への適性を評価するために用いられる心理検査の一種です。ドイツの精神科医エミール・クレペリンの研究に基づき、日本で独自に開発されました。現在では、株式会社日本・精神技術研究所が提供しており、その名称は登録商標となっています。

検査の方法と評価

検査は、1桁の数字の足し算を連続して行うというシンプルなものです。具体的には、3から9までの数字の組み合わせで計算を行い、前半15分、休憩を挟んで後半15分、合計30分間作業を行います。この間、1分ごとの作業量を記録し、その変化のパターンを「作業曲線」として分析します。

評価の মূলとなるのは、「定型曲線」と呼ばれる、健康でバランスの取れた人に типичноに見られる曲線パターンです。受験者の作業曲線と定型曲線を比較し、類似点や相違点、特徴的な変化などを分析することで、その人の性格や適性を評価します。

評価は大きく「能力面の特徴」と「性格・行動面の特徴」の2つに分かれます。「能力面の特徴」では、作業のスピードや正確さ、複雑な作業への対応能力など、知的な側面を評価します。一方、「性格・行動面の特徴」では、受験者の性格やパーソナリティ、行動傾向など、心理的な側面を評価します。内田クレペリン精神検査は、知能検査と性格検査の両方の側面を兼ね備えていると言えるでしょう。

検査の用途

内田クレペリン精神検査は、様々な場面で活用されています。

企業における採用試験: 多くの企業や自治体で、採用選考時の適性検査として用いられています。これにより、応募者の性格や能力が、企業文化や職務内容に合致するかどうかを判断します。
学校における進路指導: 高校などで、生徒の性格特性を理解し、適切な進路選択を支援するために活用されます。
特定の職業における適性評価: 特に、鉄道やバスなどの公共交通機関では、乗務員の採用試験で広く使用されています。国土交通省の規定により、JRグループをはじめとする鉄道事業者では、運転士の適性検査として3年に1度の受検が義務付けられています。

欠点と批判

長年にわたって使用されてきた内田クレペリン精神検査ですが、いくつかの欠点や批判も存在します。

検査結果の操作可能性: 検査方法が広く知られているため、受験者が意図的に結果を操作する可能性があります。例えば、定型曲線に近づけるように作業量を調整するなどが考えられます。
受験者への負担: 単調な作業を長時間行うため、受験者にとって精神的な負担が大きいという指摘があります。
検査の信頼性への疑問: 心理学者の村上宣寛は、個人の体調や状況によって作業曲線に大きな誤差が生じるため、検査の信頼性は低いと主張しています。

参考文献

外岡豊彦監修『内田クレペリン精神検査・基礎テキスト』日本・精神技術研究所、1975年
村上宣寛著『「心理テスト」はウソでした。- 受けたみんなが馬鹿を見た』日経BP社、2005年、ISBN 978-4822244460

関連項目

内田勇三郎
エミール・クレペリン / 作業曲線
ブルドン抹消検査
性格検査 / 適性検査

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