内田九一

内田九一の生涯と業績

内田九一（うちだ くいち）は、1844年に長崎の万屋町で生まれました。幼少期に両親を失い、伯父に育てられた彼は、後の人生で数々の業績を残しました。彼の名の「九一」は、その名にも何らかの意味が込められているものと考えられています。

青年期には、松本良順の指導のもと、オランダ軍医のポンペの舎密試験所で化学を学び、その後、福岡藩士・前田玄造から写真術を学びました。この経験は、彼が写真家としてのキャリアを築く基盤となります。1865年、内田は大阪の石町で写真館を開業し、特に歌舞伎役者や芸者を撮影することで名声を得ました。彼はその後、1868年に横浜の馬車道へと移転し、さらなる成功を収めます。

明治2年（1869年）には、東京の浅草に「九一堂万寿」という写真館を設立し、瞬く間に「東都随一」の写真師として名を馳せました。1868年から1872年にかけて、彼は明治天皇の帝国を代表する公式写真を多く撮影しました。特に明治5年には、宮内省の御用掛として明治天皇の西国御巡幸に同行し、巡幸中の天皇の肖像写真を手掛けます。天皇の束帯姿や西洋服姿の写真は「御真影」として広く配布され、各地での記念の品となりました。

内田の写真は、役者や芸者を対象にした作品が特に評価され、彼の生活は安定したものとなりました。その実績を背景に、神田駿河台紅梅町には豪邸を建築しました。しかし、彼の幸せな日々は長く続きませんでした。1874年から肺結核を患い、32歳という若さでこの世を去りました。彼が撮影したネガは他の写真師たちに販売され、特に日下部金兵衛などがその作品を手に入れています。そのため、内田による風景写真を含むアルバムが、横浜で見かけられることもあります。

内田の浅草の写真館は、彼が亡くなった後も続きました。明治14年（1881年）には、著名な写真師である北庭筑波の手に渡り、「旧内田舎」として再び開業しました。これにより、内田九一の名はその後も多くの人々に知られる存在となりました。彼の業績は、後の写真家たちに多大なる影響を与え、幕末から明治期における日本の写真文化の発展に寄与したのです。

今なお内田九一の名前は日本の写真史に刻まれ、彼の作品は多くの文献や展示で紹介されています。最近では、彼の業績を特集した書籍や展示会も開催され、改めて彼の存在が注目されています。数々の資料や写真は、後世の人々によって大切に保存され、その魅力が違う形で受け継がれています。

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