内藤国夫

内藤 国夫

（ないとう くにお）

ジャーナリスト、評論家、著述家として知られる内藤国夫は、1937年5月27日に兵庫県芦屋市で生を受けました。1999年7月8日、食道癌によりその生涯を閉じています。

若き日々から新聞記者へ

東京大学法学部を卒業した内藤氏は、学生時代には自治会議長を務め、激動の時代であった六十年安保闘争を体験しています。この時期の経験は、その後のジャーナリズム活動における社会や権力への視点に深く影響を与えたと考えられます。

大学卒業後の1961年、政治学者である丸山眞男からの推薦を受け、毎日新聞社に入社します。以来、社会部を中心に記者としてのキャリアを積み、東京都庁や警視庁といった重要な担当を歴任。特に1968年の東大闘争においては、専従記者として現場の取材に深く関わりました。編集委員としても活躍し、長年にわたり社会の様々な問題と向き合いました。

独立、そして創価学会批判の柱に

1980年、毎日新聞社を退社した内藤氏は、フリーのジャーナリスト、評論家として活動の幅を広げます。退社直後の『現代』1980年4月号には、当時創価学会名誉会長だった池田大作へのインタビューを掲載し、大きな話題を呼びました。しかし、その後の内藤氏の活動の最も大きな柱となったのは、創価学会に対する継続的かつ厳しい批判でした。

特に月刊誌『諸君!』では、「月刊創価学会問題」と題した連載を10年以上にわたり書き続け、創価学会の組織運営や政治との関係性、教義解釈などに対して批判を展開しました。1995年8月号に掲載された記事では、「政界に進出し、国家権力と結びつく、また結びつこうとする権力志向、権力依存の宗教団体は邪教だということだ」と述べ、さらに「オウムよりはるかに始末が悪い難問である」とまで指摘するなど、その批判は非常に厳しいものでした。

このような発言は時として物議を醸し、1994年には講演での創価学会に関する発言が部落解放同盟からの抗議を招き、謝罪に至る一幕もありました。しかし、内藤氏の創価学会に対するジャーナリスティックな視点からの追求は、晩年まで続けられました。

多様な関心と著作

ジャーナリストとしての内藤氏は、創価学会問題以外にも幅広いテーマに関心を持っていました。例えば、国鉄の「生産性向上運動」（マル生運動）に触れる中で、当時の総評事務局長であった富塚三夫を「国鉄マル生時代の戦友仲間」と表現したことなども知られています。これは、社会の深層に切り込む取材姿勢の表れと言えるでしょう。

内藤氏は多作な著述家でもあり、その著作は多岐にわたります。学生運動を扱った初期の作品『ドキュメント東大紛争』をはじめ、創価学会や公明党に関する批判的な著作（『公明党の素顔』『創価学会の野望』『崩壊する創価学会』など）、新聞記者の仕事に関する内幕や研究（『新聞記者として』『新聞記者の世界』）、インタビュー技法についての解説書（『インタビュー入門』）、特定の政治家や事件を追ったルポルタージュ（『美濃部都政の素顔』『悶死 中川一郎怪死事件』）、経済や企業問題、社会問題に関する評論など、その関心の幅広さを反映しています。これらの著作を通じて、自身の取材で得た知見や社会に対する批評的な視点を広く世に問いました。

ジャーナリストとして、また評論家として、権力や組織に対する批判精神を貫いた内藤国夫氏の活動は、日本の言論界に確かな足跡を残しました。

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